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システム開発・アプリ開発トラブルでの損害賠償はどの範囲までできる?【2022年11月加筆】

システム開発・アプリ開発でトラブル勃発!損害賠償の対象とは?

システム開発・アプリ開発はトラブルの宝庫です。トラブルが発展し、相手方を訴えるという場合、損害賠償はどこまでの範囲を請求できるのでしょうか

例えば、ユーザがベンダに対して、損害賠償をする場合には、どの範囲の損害賠償を請求できるのでしょうか?請求できる可能性のある項目は以下の通りです。

  1. システム開発契約に基づいて、ベンダに支払った開発費用
  2. システム開発契約のために、支払った人件費
  3. システム開発のために外注した場合には、その外注費
  4. システム開発のための回線費用
  5. システム開発のために発生した出張旅費
  6. システム導入に当たって実施した社員研修費用

もちろん、実際に請求できるかどうかは、各事案毎に異なってきます。

この中で、特に争いなるのが、「2 システム開発契約のために、支払った人件費」です。

ユーザ側の人件費は、損害賠償の対象になるのか

ユーザ側の人件費については、以下のような問題があります。

(1)ユーザ側の担当者は、当該システム開発の業務だけを行っているわけではない。他の業務も行っているのであり、どの程度の時間を、当該システム開発の業務に費やしていたのか立証が難しいのです。

(2)人件費は、雇用契約や委託契約によって、最初から支払うことが予定されており、ベンダの責任によって
発生したものではない。

このように、ユーザ側から人件費を損害賠償として請求する場合には、当該システム開発のための人件費であることを立証できないといけないのです。

また、システム開発には、ユーザ側にも、ベンダ側のシステム開発作業に対する協力義務があると、判例では言われています。

参考ブログ:システム開発契約が途中でとん挫した?!ベンダ側、ユーザー側の法的責任はどうなる?

よって、当該システム開発によって、自社従業員が作業せざるを得なくなったとしても、その人件費全額を損害賠償請求することは、難しいといえます。

裁判例でも、ユーザ側が主張する人件費全額については、認められないことが多いです。

当該システム開発による損害といえるか

以上のように、ユーザとしては人件費が、「当該システム開発によって、発生した」と主張立証できるかにかかってきますし、ベンダ側としては、ユーザ側の人件費は「当該システム開発によって発生したものではない」ということを主張していくことになるのです。