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【資金決済法】商取引の安全性を保証するエスクローサービスを行うための法的注意点。【2023年4月加筆】

急速に普及しているエスクローサービスとは?

クラウドソーシングやオークションサイトで、ユーザーが一番不安なことは、販売者から本当に商品が届くのか、購入者からお金は支払われるのかということです。ネットビジネスは、お互いに面識がなく、一言も話さずに取引が成立してしまうので、この不安はつきまとうことになります。

そこで、この不安を解消するために、第三者が買主から代金を預かり、商品の引き渡しや仕事の完成が完了したことを確認した時点で、第三者が売主にお金を支払うサービスをするのが、エスクローサービスです。

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資金決済法上の資金移動業者とは

このビジネスモデルは、従来の「為替取引」や「信託業」に該当すると言われ、銀行などの金融機関以外は、できないとされていました。しかし、資金決済法の改正により、「資金移動業」ととして、金融機関以外の会社も、「資金移動業者」の登録を行えば、エスクローサービス(取引金額の上限が、100万円)を行うことをできるようになりました。

ただ、「資金移動業者」になると、以下のような規制を受けることになります。

  1. 資金移動業者の内閣総理大臣への登録
  2. 資金移動業者は、送金途中にあり滞留している資金の100%以上の額を資産保全するため、当該金額を供託
  3. 資金移動業者への立入検査、業務改善命令、業務停止命令の措置
  4. 情報の安全管理措置

ITベンチャーやスタートアップ企業にとって、このような制約は、相当な負担となりますよね。そのため、資金移動業の登録を行わないでエスクローサービスとしている事業者も出てきています。しかし、資金移動業の登録を行わないで、資金移動業を行った場合には、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金が科されます。

このような重い罰則規定されていることから、無登録で行うことは得策ではありません。しかし、エスクローサービスの全てが、「資金移動業者」に該当するわけでもないのです。「資金移動業者」の登録を受けずに、エスクローサービスを受ける方法はあるのしょうか?

【2020年12月加筆】資金移動業の法律が改正されました。

資金移動業の法律が変わる!資金決済法の改正案を弁護士が解説!

代金決済代行サービスとして行う

一つの方法としては、代金決済代行サービスとして行う方法です。代金決済代行サービスとは、商品サービスの代金を、決済代行業者に支払い、決済代行業者が受け取ったお金を提供者に渡す取引のことをいいます。

「資金移動業」との大きな違いは、「代金決済代行サービス」は、単に代金を預かるだけでなく、買主(発注者)が代行業者に代金を支払った時点で、売主(発注者)と買主(受託者)との間の決済が完了しているということです。

クラウドソーシングサービス会社のランサーズは、利用規約の中で、以下のように判示しています。

本サービスでの決済完了手続きについては、弊社が別に決済条件を明示した場合を除き、エスクローによるものとします。このエスクローは、クライアントのランサー(チーム制においては、リーダー及びメンバーをいいます。本条において以下同じ。)に対する報酬支払決済の代行を目的としており、クライアントは、クレジットカード決済、銀行決済が利用できるものとします。

この規定は、ランサーズの仕組みが、「資金移動業」ではなく、「決済代行サービス」であることを意識して作成されたものです。

よって、資金移動業とみなされないためには、エスクローサービス事業者が代金を受け取った時点で、売主(発注者)とか買主(請負者)の決済が終了するという仕組みにする必要があるのです。

資金移動業か決済代行かは、慎重な判断が必要

このように、資金移動業者に当たるか、決済代行に当たるかは、専門的な判断が必要になります。
自社のサービスがどちらに当たるのかは、慎重に判断するようにしましょう!