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質屋アプリ「CASH」は法律的に問題はないの?弁護士が解説!

課金サービスに必要な法律

話題のアプリ「CASH」その仕組みとは

今「CASH」というアプリが話題です。

CASH公式サイト

自分の持っている商品を写真を撮り、アプリで送ると、すぐに金額を査定。すぐに口座に入金されるというもの。

その後、ユーザーは、商品をお金に変えた後は、「2ヶ月以内にお金を返すか」「写真を撮った商品を送るか」選択できます。

お金を返した場合には、返金手数料として15%を支払う必要がありますが、商品を送る場合には、お金は返金する必要はなく、商品は宅配業者が自宅まで集荷に来るので、手間いらず…

いやぁ、これを考え、実行に移し、サービスをローンチした皆さまには、本当に敬意を表したい!すごいことを考える人たち、そしてやり切る人たちに、ただただ脱帽です。

ですが…一応、弁護士という立場から、この「CASH」というアプリサービスは、法律的にどうなのでしょうか?

古物商は持っているが、貸金業・質屋営業の許可は取得していない

「CASH」サービスですが、古物商の許可は取っていますが、貸金業や質屋営業の許可は取得していないとのことです。

「CASH」の運営会社である「株式会社バンク」光本氏も次のように話しています。

やっていることはあくまで古物の流通です。なので古物商の免許(古物商許可)は持っていますが、貸金業や質屋業(質屋営業許可)などの免許は取得していません。15%の手数料は本来古物流通で得られるはずだった買取による機会損失を補填するためのキャンセル料として頂いています

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質屋営業には、当たらないのか

今回のキャッシュですが、インターネットでは「質屋アプリ」と言われています。質屋を営むのであれば、質屋営業許可が必要になりますが「CASH」は質屋営業には当たらないのでしょうか?

これについては「質屋営業法」という法律があり、その中で「質屋営業」の定義があります。

質屋営業とは、物品を質に取り、流質期限までに当該質物で担保される債権の弁済を受けないときは、当該質物をもつてその弁済に充てる約款を附して、金銭を貸し付ける営業をいいます。

質屋営業のポイントは、質屋が一旦商品を預かるということが、必要になります。

今回の「CASH」は、商品の写真を取っているだけなので、商品を預かっていません。
しかも「CASH」は、あくまで商品の買取であり、「キャッシュにする」ボタンを押して、口座に入金があった時点で、所有権がCASH側に移転するという形をとっています。

よって、法律上の「質屋営業」には該当しない可能性があります。

貸金業法との関係ではどうなのか?

また、2か月後に、お金を返した場合には、返金手数料として15%を支払う必要がある点について、実質的には、貸金業に当たるのではないかということが言われています。

貸金業を営む場合には、貸金業登録が必要です。

貸金業法上の「貸金業」とは、金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介を含む。以下これらを総称して単に「貸付け」という。)で業として行うものをいいます。

「CASH」側は、商品の売買であり、貸金業ではないとしていますが「CASH」の仕組みは、上記の「売渡担保」に該当する可能性があります。

売渡担保とは、自己の所有する商品を売り渡して代金の形で融資を受け、一定期間内に代金に利息を加えた金額を弁済して商品を取り戻すことです。

仮に、貸金業であるとすると、出資法上、貸金を業としておこなっている場合、年利20%を超えれば違反となり、年利109.5%を超えれば刑事罰が課されます。

「CASH」は、返金手数料として「2カ月以内に15%」が利息ということであれば、年利90%です。これを1か月で返金したとすると、年利は180%になります。

利息制限法、消費者契約法の問題

「CASH」の返金手数料を、貸金の「利息」であると構成すると、利息制限法の問題が出てきます。

利息制限法は、利息の上限を決めたものであり、法律上の上限を超えた金額については、無効になるとしたものです。

つまり、法律上の上限を超えた金額については、支払わなくていい、支払い済みの場合には、返金を請求できるということです。

利息制限法

また、返金手数料というのは、契約解除したことによる違約金という性格があることを考えると、消費者契約法上の問題が出てきます。

消費者契約法9条では、「契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項」を無効としています。

新しいビジネスモデルは、法律的な検討も必要

以上のように、「CASH」については、法的な懸念点があります。もちろん「CASH」側も、このような法的な検討をした上で、問題ないという判断のもと、サービスをリリースしたと思います。

大事なことは、新サービスをリリースする際には、法的な観点も検討が必要ということです。後から、リリースして、行政などが待ったかかってしまうのは避ける必要があります。

自社のサービスが法的に大丈夫かを確認するには、弁護士の専門家に相談したり、監督官庁に対して、グレーゾーン解消制度・企業実証特例制度を活用することをお勧めします。

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