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スタートアップ・ベンチャー企業の役員報酬ってどうやって決めるの?【2022年7月加筆】

IT企業のための法律

役員報酬に正解はない

スタートアップやベンチャー企業にとって、役員報酬をどう決めるは、重要な問題です。

創業者や創業メンバー、新しく取締役になった者の役員報酬について、正解はありません。

金額については、売上や利益金額にもよりますし、税務上の観点からも考える必要があります。そこで、今回は、役員報酬の手続きについて、解説します。

役員報酬決議の手続き

まずは、役員報酬は、株主総会の決議が必要です。

たまに、株主総会の決議がないのに、「どうしましょう…」と相談されるケ-スがあります。

株主総会決議をしていない場合には、当時にさかのぼって、株主総会議事録を作成して、決議があったことにすることも可能です。

これは、会社内部の手続きですが、会社の売却かIPOをする場合には、株主総会決議なく、役員報酬を支払っていると、問題視されることがあります。

役員報酬は、どこまで決める必要があるのか

役員報酬については、どこまで株主総会で決定する必要があるのでしょうか?例えば、各取締役の報酬金額を詳細に規定する必要はあるのでしょうか?

報酬についての総会決議は、役員報酬の総額を決定するとされています。

そのため、A取締役が○○円、B取締役が○○円とまでは、記載する必要がないのです。

これは、取締役が自分で自分に対して高額の報酬を与え、会社の財産を毀損することを防止する点にあり、総額を決議していればその趣旨は達成されると考えられることによります。

したがって、株主に対して、各取締役がいくらもらっているのかを知られたくない場合や、あらかじめ多めに株主総会で報酬を決議しておき会社の業績に応じて臨機応変に報酬額を変動させたい場合は、株主総会では報酬の総額のみを決議しておき、報酬の具体的な配分は取締役会に一任する決議を行うことも可能なのです。

役員報酬としてのストックオプション

役員へのストックオプションも報酬になります。

このストックオプションの発行も株主総会決議が必要です。また、それとは別に、報酬決議も併せて行う必要があります。

ストックオプションを発行する際に株主総会を行う場合には、その総会でまとめて報酬決議を行ってしまえばOKです!

監査役の報酬はどうする?

監査役の報酬も、株主総会の決議によって定めます。

取締役会の報酬は、株主総会で取締役の報酬の上限を決めて、個別の報酬額の決定は取締役会で決めることができます。

しかし、各監査役の報酬の額は、監査役自身の協議により決めます。株主総会において監査役報酬の上限額を決定する際には、注意が必要です。

これは、監査役は、取締役を監査する立場にあるので、取締役会で個々の報酬を決められてしまうと、この監査が、機能しなくなくなってしまう恐れがあるためです。

役員報酬を減額をできるのか

会社としては、報酬に見合った成果を出していない場合、役員報酬を減額したい場合もあると思います。

役員報酬は、株主総会で決定するので、減額する場合も、いつでも株主総会決定できると思うかもしれません。

しかし、裁判例では、役員報酬の金額が具体的に定められている場合、その額は取締役と会社の間の契約内容となる。そこで、その後に職務内容に著しい変更があったとしても、取締役の同意がない限り株主総会決議を行っても報酬を減額することはできないとされています。

よって、役員報酬は、役員の任期中に、本人の同意なく減額することは困難なのです。そのことも踏まえて、当初の役員報酬を定める必要があります。