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SES事業者がIPO(上場)を目指す際は違法な状態(偽装請負)に注意が必要!【2022年1月加筆】

IT企業のための法律

SES事業者がIPOを目指す場合

近年のIT技術の発展により、SES事業者の市場価値は日増ししているといっても過言ではありません。

そのため、IPO(上場)を検討しているSES事業者が増えてきています。

ただ、SES事業は違法な状態(偽装請負)になりやすいことから、適切な法務デューデリジェンス(法務DD)を行わなければなりません。

そこで、今回は、SES事業者がIPO準備期に注意しなければならない点についてまとめました。

グルーウィル国際法律事務所のSES適正化プラン

偽装請負調査とIPO審査は「視点」が違う!

偽装請負対策においても、IPO対策においても、SES事業者として適法な状態にあるためには、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(通称37号告示)に、違反していない状態を作ることが、最も近道と言えます。

(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)

ただし、注意しなければならない点があります。

偽装請負対策の場合は、書類がどう整備されているかよりも、実際どう運営されていたのか、に重きを置いて調査をされます。

そのため、違法の状態を作らないためには、現実に行っていないことの方が重要となります。

一方、IPO審査の場合は、適法な運営がされているかを、あらかじめ審査することになります。

現実には違法な状態が起きていない段階で判断をするため、各種書類において、違法な状態になる余地がない状態を作り、それをアピールする必要があるのです。

このように、同じSES事業を適正に行うことを目的としても、その手段が異なってくることから、偽装請負対策を講じているといっても、IPO審査には足りないこともあります。

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SES事業者のIPO準備(法務DD)で必要な対応

適正なSES事業であることを証明するためには、以下の対応が望ましいと考えられます。

1、書類等を37号告示に合わせ修正・追加

主に、基本契約書において、37号告示2条を満たす文言の追加や、各種書類において、37号告示に違反する、違反する可能性がある、違反すると誤認される恐れがある文言の削除や修正が必要になります。

上記でも述べたとおり、偽装請負調査と違い、違法な事業ではないことをアピールしなければならないため、37号告示各条項に対応する内容は、網羅しておくことが望ましいと言えます。

2、実際の運用に関する準備

上記1で網羅した契約書関係が、実際には、適法な運用をされていなければ、意味がありません。

そのため、当該関係書類の利用方法やタイミング、通常時や緊急時の指揮命令の系統などについて、フローチャートやQ&Aなどを作っておくことが望ましいと言えます。

また、社内におけるSES関係の教育が行われていると(教育に関する資料があると)より良いと言えます。

3、弁護士による確認と意見書

上記1、2により、各種書類や社内体制が適正であると言える状態であれば、弁護士による意見書が作成できます。

意見書により、上記の適法性がより強固なものであると主張ができます。

まとめ

SES事業は、違法な状態となりやすい事業であるため、主幹事証券会社としても、より厳しく内容を判断することになります。

「SES事業において何が違法となるのか」については、37号告示に基づくものと考えられているため、37号告示の存在を意識しながら取り組むようにしましょう。