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ウェブサービスで利用者が課金プランを変更する場合の注意点

IT企業のための法律

ウェブサービスで課金プランを変更したい

ウェブサービスの利用者が、当該サービスの課金プランを変更する場合もあると思いますが、その際、どのような点に留意すべきか教えてください。

課金プラン変更の法的性質

利用者による課金プランの変更は、法的性質としては契約の一部変更と整理することができます。

そもそも、一度成立した契約の一部を変更することができるのかと疑問を持たれるかもしれませんが、原則として、契約当事者双方の合意があれば、既に成立した契約の一部を変更することができます。

一般に、契約は、一方当事者の契約成立に向けた申込みの意思表示に対する相手方の承諾の意思表示によって成立しますが、契約の一部変更についても同じことが当てはまります。

したがって、サービスの提供者は、契約の一部変更が有効に成立した証として、利用者から課金プランの変更の申込みがあった際には、後に一部変更が成立したことを争われないように、当該利用者に対して課金プラン変更の申込みを受諾したことをメール等で通知するのがよいでしょう。

また、課金プランの変更は、サービス利用の対価という契約の中でも重要な部分の変更になりますので、後に利用者との間で重大なトラブルに発展しないように、変更の条件については明確に定めるとともに、変更の申込時に利用者にも理解しやすいように申込画面等をデザインするなどの配慮が必要になります。

具体的には、次のような配慮です。

  1. どの契約に関する何についての変更なのかについての説明
  2. 課金プランの変更によって利用者が受けられるサービスの詳細
  3. 変更後の課金プランが適用される時期
  4. 課金プランの変更以外は原契約が有効に存続する

旨の説明等を明確に定めておき、変更を申し込もうとする利用者に対して分かりやすく明示しておく必要があります。

課金プランの変更に対して違約金を設ける場合

サービスの設計によっては、携帯電話会社が料金プランの期間途中での解約又は料金プラン変更の際に、違約金を課す場合のように、ウェブサービスの課金プランの変更の際に違約金が発生するとの契約条項を定めることもできます。

その場合には、当該違約金条項が「消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効」の規定に違反しないように注意しなければなりません。

消費者契約法9条1号は、以下のように規定されています。(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)

第9条 次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。

当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの当該超える部分

この規定は、契約の解除に際して消費者にとって不当な違約金の定めがある場合には、当該事業者に発生する平均的損害を上回る部分については無効とする旨を定めています。

何をもって「当該事業者に生ずる平均的な損害を上回る部分」と判断するかはやや難しいところでありますが、同条における「平均的な損害」とは、同一事業者が締結する多数の同種契約事案について類型的に考察した場合に算定される平均的な損害の額であると解され、具体的には、「解除の事由、時期等により同一の区分に分類される複数の同種の契約の解除に伴い、当該事業者に生じる損害の額の平均値」を意味するとされています。

事業者は、同サービスの月別純利益及び解約件数、利用者募集のための広告費及び人件費、契約締結に要した事務費用などの客観的かつ合理的な資料を基に、同サービスにおける解約ないしは課金プランの変更によって生じる平均的な損害を計算する必要があります。