VR事業が、これから、どんどん盛んになっていくにつれて、事業者の法的責任も大きくなってくる可能性があります。
VR事業者として、どのような責任を負う可能性があるのか、解説していきます。
一つには、製造物責任法が考えられます。
VRは、ヘッドセットなどのハードウェアと結びついて、事業展開することになるため、製造物責任法が問題になります。
この法律では、製造業者等は、その製造、加工、輸入等をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体または財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。
つまり、製造物責任法では、VRのハードウェアに欠陥があった場合には、損害賠償責任を負うことになるのです。
ここでいう、「欠陥」とは、「当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいいます。
たとえば、VR用ヘッドマウントディスプレイの装着時には、ディスプレイと目の距離が近く、目に負担がかかりがちであることから、利用者に斜視等の健康被害が生じる可能性があるといわれています。
また、目以外にも「VR酔い」等による身体の障害が発生する可能性も否定はできません。
さらに、VR機器内において、フラッシュが多用されることによって、利用者、光過敏性発作を生じさせることもありえます。
このような場合、当該VR機器は、人の体に害を生じさせうる点において、当該機器自体に「設計上の欠陥」があると認められる可能性は、否定できず、また、少なくとも、そのような適切な指示・警告がなされていなければ、その点について「指示・警告上の欠陥」が認められる可能性はあります。
さらに、たとえば、VR機器(ヘッドマウントディスプレイ)の装着時には、視界が閉ざされ、周囲の状況から遮断されるため、「VR機器のプレイ中に、部屋に入ってきた幼児の頭をコントローラーで強く殴打し、当該幼児がケガをした」などという事故が発生する可能性があります。
この点、将来的には、VR機器(ヘッドマウントディスプレイ)が今よりもより軽く、無線化することが想定され、その場合、屋外で利用していた利用者が急に道路に飛び出して車にひかれたり、高いところから落ちたりして、傷害を負ったり死亡したりするケースも出てくる可能性もあるのです。
このような場合、VR機器の製造業者等は、VR機器に内在するかかる危険性を利用者に対して、適切に告知していなかった場合等には、「指示・警告上の欠陥」が認められる可能性があります。
このように、VR等システムの製造業者等は、VR等システムの利用に伴い、利用者等に健康被害等が発生し、当該損害が、当該VR機器の「欠陥」に起因すると認められる場合には、製造物資任を負う可能性があるので、注意が必要です。
これらのリスクを軽減する観点からは、VR等システムの製造業者等は、通常想定される使用により身体上の損害が生じないようなコンテンツを制作する必要があります。
また、製品の取扱説明普や利用時に表示するアラート画面等において、VR等システムの適切な使用方法、危険性、禁止行為等を十分に説明し、利用者に理解させることが重要であるといえます。
ただし、さほど多くの規定を盛り込むことはできないと思いますので、わかりやすく、また、利便性をさほど機牲にしない程度に、効果的かつ簡潔な文言を検討して表示する工夫が求められます。