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VRゲームやVR施設で気を付けるべき法律を弁護士を解説【2024年1月加筆】

IT企業のための法律

VRゲームについて

VR(VirtualReality)とは、現実世界に実在しない世界を体験しまたは実在する世界を体験できる技術をいいます。一般に、VRはヘッドマウントディスプレイ(HMD)というゴーグル型の装置をつけることで体験することができるものです。

VRの魅力としては、没入感の高い体験ができること、映画や書籍では味わえない臨場感を得られること(空を飛ぶ、魔法を使う、数百年前の都市を歩くなど)などが挙げられます。これらの魅力は特にゲームとの相性がよいです。

VRコンテンツの制作方法は、大きくふたつに分けられます。一つ目は、実写を利用する方法です。

具体的には、360度カメラ等を用いて現実空間を撮影し、HMD等で視聴できる形式にすることで作られます。これらは、海中やライブ会場など現実世界を擬似体験するコンテンツに適しています。

二つ目は、CGを利用する方法です。CGのコンテンツは、実際に存在しない世界や、物体を構築するコンテンツに適しています。

こちらは、一般に、実写のコンテンツに比べて時間やコストがかかるが、コンテンツに対してインタラクティブな機能やデザインを加えやすいのが特徴です。

VRコンテンツ制作時における写り込み

ゲーム用のVRコンテンツを制作する際、コストの削減や現実世界をリアルに再現するため、実写を利用する方法を取り入れる場合があります。

その場合、360度カメラ等を用いて撮影した写真や動画に、たまたま著作物が写り込んでしまうことが想定されます。この点に関し、従来の著作権法では、写真や動画等に著作物が写り込んだ場合でも、以下を条件に、著作権侵害にならないとされていました(著作権法30条の2)。

  1. 当該写り込みが付随的である
  2. 著作物を分離することが困難である
  3. 新たな著作物が創作される

ただ、当該条件は厳格にすぎ、適用範囲が必要以上に限定されてしまうのではないかといった疑問が提唱されていました。

そこで、2020年6月、著作権法30条の2の適用範囲を拡大する改正著作権法が成立し、同年10月1日より施行されました。

この改正により上記要件のうち②および③が撤廃されました。同規定は、写真撮影、録音録画以外の複製・伝達行為全般にも適用されることから、スクリーンショットや生配信等にも適用されると考えられています。

VRアトラクションと風営法

現在、VRゲームを体験できる専用施設が各地に存在します。

一般に、ゲームセンターは、「風俗営業」に区分され、公安委員会の許可申請や禁止行為等の規制を受けます。適用対象である遊戯設備には「テレビゲーム機」が含まれますが、勝敗を競いまたは数字や他の表示で遊戯の得点が表示され優劣を競うなど、射幸心を煽るおそれがないものは除かれます。

そうすると、たとえば、VRでジェットコースターや自動車の運転を疑似体験できるライド系ゲームや、結果の優劣のつかないゲームは同号の適用外になる余地があります。

他方、利用回数に応じたランキングや走行タイムなど、体験以外の結果を数字等により表示する場合は適用対象になります。

VRによるトラッキング技術とプライバシー

VRに用いられている技術のひとつとしてトラッキング技術があります。これは、ユーザーの視線の動き等を追跡し、ユーザーがどのコンテンツをどれくらいの時間見て、どのような反応を示したか等を探知できる技術です。

トラッキング技術により、各ユーザーの微妙な行動パターンを見つけ出し、ニーズに即したコンテンツの提供に生かすことができます。

ただし、懸念も存在します。この技術によって、我々の深層心理や無意識のデータが収集される可能性があるります。

こうしたデータの利活用に伴うプライバシー侵害を未然に防止するのであれば、メーカー側には、ユーザーに対して、当該技術によって収集されうるデータの内容や収集データの利用方法についてわかりやすく説明し、同意を得ておくといった対応が求められます。

その際には、VR画面上に説明文を表示させて同意を選択させるなども必要です。