ライブイベントは、権利関係が複雑です。
たとえば、映画であればクラシカルオーサー(作家たち)→モダンオーサー(監督など)という、二重の権利者がいます。
これがライブイベントの中継放送を念頭に置くと、劇作家などの作家たち→舞台・イベントの作り手たち→その映像化の作り手たちと、3段階になります。
ディレクターにももともとの舞台の演出家と、映像のディレクターの 2種類います。
複雑化のもう1つの要因としては、権利者が組織化されていないことも挙げられます。
権利の集中処理が普及してません。舞台脚本家の全国組織である日本劇作家協会は、会員の著作権管理業務はおこなっておらず、その意味での使用料規程もたないのです。
それにもかかわらず、放送・配信・ライブビュー、さらには劇場用映画へのリメイク、関連の番組やイベント、何よりライブ関連の各種グッズと、いまや舞台やコンサートの二次利用ビジネスは世界的な活況にあります。
音楽コンサートなどは、各種グッズの売上は収入の大きな部分を占めます。また、いかにネット配信やパブリックビューで舞台・コンサート映像を見せても、動員には悪影響はないことが現実に証明されています。
では、ライブの二次利用権利処理は、どんな全体像をもっているか。下の一般的な権利処理の表でつかむことができます。
舞台公演・ライブイベントは、まずはそれを構成する曲・台本や音楽の著作物の上演・演奏される場です。よって上演・演奏やその二次利用には当然権利者の許諾がいります。
また、舞台美術のうち装置デザインも著作物であるケースが多いです。舞台衣装や照明デザインは一応論点となるが、著作物にあたるケースも少なくありません。
舞台演出家やプロデューサー(制作者)が、舞台公演という著作物の著作者とみなされるかは微妙です。
ただ少なくとも演出家は、現在の法律は「実演家」としての保護をが与えられます。以上から、演出家も俳優やダンサーらと並んで、イベントの収録に対して拒否権を持つことになります。
音楽も、ライブイベントでは、複雑でリスクも多い領域です。ミュージカル曲などを「演劇的に」演奏する権利である「グランドライツ」は欧米では歴史的に集中管理されず、JASRACなどの許諾では上演できない扱いが通常です。
そのため、二次利用でも権利処理は複雑化します。イベント用に作曲した曲は、JASRACの許可対象からはずして「買取り」的処理を可能とする「委嘱免除」が、一定の条件で認められます。
しかし、二次利用は免除の射程から外れる点は注意が必要です。
舞台では時には大胆におこなわれるパロディ、アレンジも、それが舞台中継など二次利用される場合には許容されないおそれがあります。