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【民法改正】システム開発トラブルで、ベンダ側が報酬を請求できる場面とは【解説】【2023年2月加筆】

改正民法時代のシステム開発紛争
4月1日から、改正民法がスタートしました。
新型コロナウイルスの影響なのか、最近弊社に、システム開発トラブルの相談が急増しています。不安定な社会情勢のときには、トラブルが頻発します。
そこで、今回は、民法改正後で想定されるシステム開発紛争について、お話します。
途中段階でも、ベンダは報酬を請求できる
改正民法は、ベンダの報酬請求について、以下のように改正が行われました。
改正民法634条
次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます。
- 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき
- 請負が仕事の完成前に解除されたとき
改正民法634条では、以下の2つの場面を想定し、既にした仕事の結果のうち、可分な部分の給付によって注文者(ユーザ)が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成とみなした上で、注文者が受ける利益の割合に応じて、報酬を請求することができるとされています。
- 注文者(ユーザ)の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき
- 請負が仕事の完成前に解除されたとき
そして、この規定は、以下の場合が含まれます。
- ベンダのせいで、システム開発がダメになった
- ベンダ・ユーザの両方のせいではなく、システム開発がダメになった
これは、従来の最高裁判例を明文化したものです。
ベンダによる請負契約の報酬の請求方法
改正民法も踏まえて、ベンダとしては、請負契約の報酬について、各状況に応じた請求の仕方を検討することになります。
システムが完成して引き渡している場合
この場合は、もちろん契約代金全額の請求ができます。
システムが完成していない場合
完成していくても、以下の場合には、契約代金全額の請求又は出来高部分の請求ができます。
- 未完成部分が全体の分量に比べて少量
- 未完成部分が発生した原因は、ユーザの帰責事由による
ユーザの帰責事由により、システム開発がとん挫している場合
契約代金全額の請求ができます。
ユーザのせいではなくシステム開発がとん挫した場合or完成前に解除された場合
上記のように、可分な部分の給付によってユーザが受ける利益の割合に応じて報酬を請求できます。
準委任契約の報酬は、どうなる?
システム開発のSES契約や要件定義作業などでは、準委任契約が締結されることが多いです。改正民法は、以下のような規定をおいています。
成果等に対する報酬
- 委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
- 第634条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。
従来、準委任契約は、請負契約と異なり、成果物ではなく、作業に応じて報酬を支払うことになっています。
しかし、改正民法では、契約で成果物の引渡しが契約で定められたときは、成果の引渡しと同時に支払うとされています。
委任事務を処理することができなくなった場合の報酬請求
改正民法では、委任事務を処理することができなくなった場合でも、「委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき」「委任が履行の中途で終了したとき」は、ベンダは、ユーザに対し、履行の割合に応じて報酬を請求できます。
もっとも、成果報酬型の委任契約では、改正民法634条が準用され、前述した請負契約と同様、ベンダは、ユーザに対し、可分な部分の給付によってユーザが受ける利益の割合に応じて報酬を請求できることが明文化されています。
準委任契約の報酬請求時期
改正民法では、委任契約であっても「成果に対して報酬を支払うことを約した場合」は、成果の引渡しが報酬を請求するための要件とされており、請負契約と同様の規定となっています。
この規定は、成果に対して支払われる成果報酬型の委任契約が認められることに着目した規定です。
システム開発の場合、要件定義や外部設計の工程は準委任契約で締結されることも多いですが、要件定義書や外部設計書の成果に対して報酬を支払うことを約したと評価される場合(成果報酬型と評価できる場合)は、請負契約と同様、引渡しが報酬請求のための要件になります。
これに対し、要件定義書や外部設計書等の成果に対して報酬を支払うのではなく、ベンダはユーザの業務を支援しているにすぎないと評価できる場合は、引渡しがなくても報酬を請求できることになります。
これを明確にするために、従来の作業に対して、報酬が発生する準委任契約を履行割合型、成果に対して支払う準委任契約を成果報酬型と、契約書に明記することが考えられます。