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システム運用・保守契約においてベンダ側が負う責任とは何か【2023年3月加筆】

システム開発のための法律

システムの運用・保守契約とは

システム運用・保守契約について、「運用」とは、システムを稼働させ、業務を円滑に遂行させるための作業を行うことをいいます。

「保守」とは、システムが業務に適合するように維持管理(不具合の修補や機能改善等も含む)することをいいます。

これらの業務は、具体的な仕事の完成を目的とするものではなく、規定された業務を行うことになるので、請負契約ではなく、準委任契約に基づいて行われることが多いです。

システムの運用・保守は、揉めやすい

システムの「運用」も「保守」というのは、ベンダの担当する業務や責任の範囲が曖昧になりやすいです。

特に、ベンダ側とユーザ側では、システムに関して持っている情報に格差があるので、これが生じやすいのです。

よって、契約締結の際には、「運用」・「保守」の定義(どこまで対応できるか)を明確に記載しておく必要があるのです。

システムの運用・保守とSLA

サービスレベルアグリーメント(SLA)とは、サービスの提供者と利用者との間でのサービスの品質に関する合意規定です。

これは、ベンダとユーザ間の契約の一部を構成するものです。

SLAでは、セキュリティ、保守、サポートデスクといったサービス対象ごとに、可用性、機密性、信頼性、性能などのサービスレベル条件が定められることが多いです。

SLAの内容は、ベンダが定めることが一般的であるが、主にシステム運用事業者の義務内容を定めたものであり、システム運用事業者はその内容、水準に拘束されました。

なお、SLAは、内容、サービスレベル(水準)という形式で定められることが多いのですが、その水準に達しなかった場合の効果(単なる努力目標にすぎないのか、あるいはサービス料金の返金なのか)も様々であるため、ユーザ側は、システム運用・保守を委託する際には確認が必要です。

例えば、米国アマゾンが提供するAWS(AmazonWebService)では、月間の使用可能時間割合が99.00%以上99.99%未満であった場合には、利用者が支払った料金の10%が、99.00%未満だった場合には30%が払い戻される旨が定められています

運用・保守事業者が負うべき義務と違反の有無

システム運用・保守契約は準委任契約なので、システム運用事業者は、システム運用・保守契約に基づいて善管注意義務(ちゃんと仕事してねという義務)を負います。

その具体的内容は、契約やSLAでの合意に従うことになるため、ケースバイケースにならざるを得ません。

問題が起こった場合には、契約内容やSLAの記載に従い、問題があるのか、契約違反があるのかを検討する必要があるのです。

ここで注意すべきなのは、システムには一定の頻度で障害、不具合が発生することは避けられず、発生した障害について、常に原因が判明するとは限りません。

原因が明らかになった場合でも、システム運用事業者の帰責事由によるものであるかどうかは、運用・保守契約や、SLAの内容に照らして判断されるため、責任の所在が明らかになるようにするために、できるだけ具体的な義務内容について合意しておくことが必要です。

システム運用保守の損害賠償

システムに障害を発生させたシステム運用事業者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。障害が起こった場合の損害については、以下のような損害が考えられます。

  • 障害の対応のための作業等に要する費用
  • システムが利用停止・機能不全になり、事業、業務ができなくなったこと等による直接的な損害
  • その他の信用を失ったことによる損害や間接的な損害

以上のような損害が考えられるので、ベンダとしては、実際に、どのくらいの損害になるのかを見極める必要があります。