特許法改正案が、2019年5月17日に公布されました。
特許法について、今回の法改正では、特許権侵害の立証が難しい現状があるので、それを緩和しようというものです。
具体的には、以下のことが行われています。
当事者の申立てにより裁判所が指定する査証人が、特許権侵害があったかによる事実の有無の判断に必要な証拠の収集を行うための調査を行い、裁判所に報告書を提出する査証制度が規定されました。
これは、特許権侵害のための証拠収集をしやすくするための制度です。
査証(調査)が認められるための要件は厳格に定められており、以下が必要です。
まず、査証(調査)の実施を求める当事者は、所定の事項を記載した書面により、査証の申立てを行います。
この申立てが認められ、裁判所が査証を命じた場合には、裁判所が指定する査証人により査証が実施されます。
査証人は、当事者の工場、事務所その他の場所に立ち入ること、査証を受ける当事者に対する質問や書類等の提示を求めることができるほか、装置の作動、計測、実験その他必要な措置として裁判所の許可を受けた措置をとることができます。
査証が実施されると、査証人は、査証報告書を作成し、裁判所に提出します。
査証報告書の写しは査証を受けた当事者に送達されることとされており、当該当事者は、その写しの送達を受けた日から 2 週間以内に、査証報告書の全部または一部を申立人に開示しないことを申し立てることができます。
特許権侵害がされたとして、それによっていくらの損害を被ったのかを、具体的に立証するのは、非常に難しい問題です。
よって、特許法では、損害賠償について、以下の規定をしています。
この点、(3)実施料相当額算定の際の 考慮要素として、特許権侵害があったことを前提として当事者間で合意をするとしたならば、特許権者が得ることとなる対価を考慮することができることが明記されました。
今回の法改正については、特許権侵害について請求しやすくし、損害賠償についても算定しやすくなりました。
今後、特許権侵害訴訟の賠償額については、高額化になる可能性があります。今後の裁判の動向について、注意が必要です。