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従業員の退職後に同業者への転職することを防ぐことはできますか?【競業避止義務】【2022年11月加筆】

退職者に対して同業に転職されるのを防ぐことはできるのか?

退職者の転職先が同業社であった場合、企業としては、自社のノウハウなどが流出する可能性があります。

事業者としては、退職者に、同業の転職先には行ってほしくないと思うもの。そこで、退職者に対して、同業社に転職先させないということができるのでしょうか?

従業員との合意がなければ、禁止することはできない

従業員が、勤めているor退職した会社と同業者に就職することを禁止することを競業避止義務といいます。

従業員はその在職中は労働契約の付随的義務として、使用者に対して競業避止義務を負います。

しかし、労働契約が終了した後は当該義務を当然に負うわけではありません。退職後の競業避止義務は、従業員との間に明確な合意があり、当該内容が合理的な場合に限り有効と認められます。

退職後の競業避止義務を定めた合意は有効

従業員との間で、退職後に競業他社に就職してはならないという合意は有効でしょうか?
合意すること自体は、有効です。

しかし、退職後、競業他社に就職しないという合意が成立していたとしても、合意の有効性が認められない場合があります。

退職後の従業員には職業選択の自由(憲法22条1項)があるため、同業他社への就職や同業の独立営業などについて過大な義務を課す場合には、合意が無効と判断されます。

退職後の競業避止義務の合意には以下の3つを総合的に考慮し、当該義務規定の合理性が認められないときは、公序良俗に反し無効になるものと判断されます。

  1. 競業避止を必要とする使用者の正当な利益の存在
  2. 競業避止の範囲が合理的範囲にとどまっているか否か
  3. 代償措置の有無等

①競業避止を必要とする使用者の正当な利益の存在

当該企業につき、価値のある営業情報、技術、ノウハウ等があり、これらの流出を防ぐためには,競業避止義務を課すことが必要であると認められる必要があります。

②競業避止の範囲が合理的範囲にとどまっているか否か

「競業避止の範囲」は、「競業避止を必要とする企業の正当な利益」を守るために必要最小限の範囲に限られるといえます。

例えば、競業避止の地理的範囲(日本全国や全世界などの広い範囲だと、無効とされる可能性が高い)や競業避止の「年数」も大事なポイントです。

裁判上は、2年で有効した例が多くあり、5年で無効とした例があります。3年では、他の条件次第で有効・無効とした例が、あります。

よって、年数としては、2~3年くらいが妥当なところです。

③代償措置の有無等

「代替措置」は、競業避止義務により、職業選択の自由が制限されることに対する代償となる金銭が代表的なものです。企業から、まとまったお金が出ているのであれば、競業禁止も有効とされる可能性が高くなるのです。

競業避止義務のまとめ

以上のように、従業員に拘束力を持たせるためには、一定の限度があります。競業避止義務条項が無効になってしまったなんてことにならないように、十分注意しましょう!