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AI(人工知能)が芸術家に?!でもAIの著作物は著作権法上の保護はどうなるの?

AIが生み出した創作物。著作権上の問題は?

17世紀のオランダ画家・レンブラントの画風を機械学習や顔認識で分析し、3Dプリンタを使って“新作”を描く、そんなプロジェクトが見事実現し、レンブラントの作風をまねた新しい作品が完成しました。

参考記事:人工知能が描くレンブラントの“新作”絵画 機械学習・3Dプリンタを活用

このプロジェクトは、米Microsoftやオランダのデルフト工科大学などの共同チームにより実現されました。それでは、日本で同じようにAIが創作物を生み出した場合、その創作物は著作権上どのような問題があるのでしょうか?

AI創作物は2パターン存在する

創作物は、著作権法上の「著作物」(著作権法2条1号)にあたる場合、著作権が発生し無断で利用することができなくなります。そこで現在、AI創作物が著作権により保護されるのかにつき議論がなされています。

2016年4月8日(金)、知的財産戦略本部の報告では、創作物について以下の3パターンに整理されました。

  1. 人による創作
  2. AIを道具として利用した創作
  3. AIによる創作

次世代知財システム検討委員会 報告書(案)』より引用

パターン①は、人が創作をしているため、当然に著作権により保護されます。それでは、AI創作物のパターン②と③に著作権が認められるのでしょうか?

AI創作物は「著作物」にあたるのか

「創作物が著作権法上の「著作物」に当たるのか」については、当ブログの記事『AI(人工知能)が作りだしたコンテンツは著作物になるのか【AI(人工知能)と著作権の関係】』において、「創作物と認められるためには、あくまで人間の関与が必要で、人間が創作しているコンテンツのみが著作物になる」とお伝えしました。

パターン②は、人間がAIを道具として利用している以上、人間の関与があるため著作権により保護されることになります

では、人間がAIに創作指示をするだけであるパターン③はどうでしょうか?たしかに、人間がAIに創作指示をしている点で「人間の関与がある」とも言えそうです。

しかし、著作権で保護されるためには「思想又は感情を創作的に表現」(著作権法2条1項)する必要があります。AIに創作指示をするだけでは、創作物に人間の思想や感情が反映されているとは言えません。したがって、パターン③は著作権により保護されないことになります。

レンブラントの新作は、おそらくパターン③にあたります。よって、日本で同様にAI創作物が生み出された場合、その創作物は著作権により保護されないことになります。

それでは、著作権により保護されない創作物は誰のものになるのでしょうか?

AIによる創作物は誰でも利用できる?

著作権により保護されない創作物は、いわゆるPD(パブリックドメイン)として誰でも利用できます。つまり、パターン③のAI創作物については、AIに創作指示をした人間がその利用者に対して、利用料の支払い等を請求できないことになります。

しかし、これでは時間と労力をかけてAIの研究に尽力した人が報われません。今後、AI著作物をどのように保護していくのかが、議論の対象になっていくことでしょう。