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ITスタートアップ・ベンチャーにとってのストックオプションを解説【2022年4月加筆】

IT企業のための法律

ストック・オプションとは

ストック・オプションとは、会社の役職員等が一定の権利行使期間内において、あらかじめ決められた権利行使価格で所定の数の株式を会社から取得することができる権利のことをいいます。一般的には、新株予約権の形で付与されるものです。

会社の業績が向上することにより株価は上昇することとなりますので、ストック・オプションは、発行を受けた役員や従業員のモチベーションの向上につながりますし、優秀な人材の確保にも資することになります。

また、金銭を支給するわけではありませんので、ストック・オプションを発行すること自体について、会社に金銭的な負担を生じません。

そのため、特に資金が少ないなかで人材を確保していかなければならないスタートアップ・ベンチャー企業においてのメリットは大きいものになります。

他方、業績が悪化することがモチベーションダウンにつながることになりますし、付与の数量等について、バランスを欠かないように配慮をする必要があります。

ストック・オプションの種類

ストック・オプションの種類としては、有償無償の区別があります。ここにいう有償無償というのは、新株予約権の割当てを受けるときに、金銭の払込が必要か否かによって決まります。

有償ストック・オプションについてでも、公正価値を払込金額としない場合では、有利発行に該当しますので、会社法上有利発行に関する手続をとる必要がありますし、役職員に対して発行の場合には、会社法上における報酬規制も受けることになります。

そのため、会社法上の手続に漏れがないか注意が必要です。

他方、無償ストック・オプションは、払込を要しない新株発行になります。上記同様に有利発行の手続と役職員に関しては会社法上における報酬規制を受けますので、会社法上の手続に漏れがないか注意が必要です。

税制適格ストック・オプション

ベンチャーファイナンスにおいて、ストック・オプションの設計を行うに際して、税制適格の問題があります。

税制適格のないストック・オプションの場合であっても、従業員等に対してストック・オプションが付与された時点(権利付与時)では課税はされません。ストック・オプションの場合、付与を受けた時点で、直ちに経済的利益が実現されるわけではないからです。

しかしながら、権利行使時の経済的利益に課税がされます。

  1. 権利行使によって株式を取得した段階で給与所得としての課税
  2. 当該株式を譲渡した際の譲渡所得としての課税

①の段階では実際に株式を売却しているわけではなく含み益の状態というわけですが、課税が生じます。

これに対して税制適格ストック・オプションの場合には、②株式を売却した際の譲渡所得としての課税のみが生じます。

株式売却によって資金を得た段階で課税をされることになりますので、税制上優遇されているものになります。

ただし、税制適格ストック・オプションとなるためには、以下のような要件が必要です。

  1. 無償である
  2. 付与対象者が会社及びその子会社の取締役、執行役、使用人等である
  3. 行使価額が付与時の時価以上である
  4. 行使期間が2年を経過した日から10年を経過する日までである
  5. 権利行使限度額は年間1200万円まで
  6. その他要件

税制適格ストック・オプションについては、付与対象者が社内人材に限られていましたが、一定の要件のもとに社外人材にも拡大されています。

税務上大きな違いが生じますので、ストック・オプションについては専門家と相談をしながら制度設計をすべきでしょう。