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ステーブルコインの法律的規制について、コイン類型毎に弁護士が解説【2022年10月加筆】

IT企業のための法律

ステーブルコインの法律

仮想通貨(暗号資産)の種類の中に、ステーブルコインがあります。ステーブルコインとは何かということはここでは割愛しますが、各種類のステーブ ルコインは、その機能等に応じて、法律的に以下のように分類することができます。

  1. 暗号資産
  2. 前払式支払手段
  3. 為替取引を行うことができる業者(銀行および資金移動業者)のみがその手段とし て発行することができる電子マネー(以下「為替取引手段としての電子マネー」 という。)

ステーブルコインといっても様々な種類がありますが、法的分類の視点は以下の通りです。

  • 通貨建資産に該当するか
  • 不特定の者に対して使用できるか/不特定の者と売買・交換ができるか
  • 金銭への払戻しが可能か

法定通貨担保型ステーブルコイン

法定通貨担保型ステーブルコインとは、米ドルなどの単一の法定通貨を裏付けに発行されるものです。

まずは資金決済法の「通貨建資産」に該当するかが問題になります。「通貨建資産」に該当すると、法律上の「暗号資産」(仮想通貨)の定義から外れ、暗号資産規制の対象外になります。

資金決済法において、通貨建資産とは、「本邦通貨若しくは外国通貨をもって表示され、又は本邦通貨若しくは外国通貨をもって債務の履行、払戻しその他これらに準ずるもの……が行われることとされている資産」をいうと定義されています。

そして、暗号資産ガイドラインでは、「本邦通貨若しくは外国通貨をもって債務の履行、払戻しその他これらに準ずるもの……が行われることとされている資産」であることを判断するに当たり、「発行者及びその関係者(以下「発行者等」とい う。)と利用者との間の契約等により、発行者等が当該利用者に対して法定通貨をもって払い戻す等の義務を負っているか」等を考慮することとされています。

法定通貨担保型ステーブルコインは、その発行者が単一の法定通貨によって払戻しを行うことを約束しているため、通貨建資産に該当するものといえ、 暗号資産には該当しないと考えられます。

そして、金銭による払戻しが約束されていることから、原則として金銭による払戻しを禁止した前払式支払 段には該当せず、為替取引手段としての電子マネーに該当しないかを検討することとなります。

【2022年6月加筆】

2022年6月に法定通貨型のステーブルコインの法改正が行われました。

ステーブルコインの取引所や仲介を担う業者は、「電子決済手段等取引業者」として、登録が必要になりました。

暗号資産担保型ステーブルコイン

暗号資産担保型ステーブルコインについても、まず、(i)通貨建資産に該当するかが問題となるところ、暗号資産担保型ステーブルコインは、法定通貨に対する価値の変動を最小限に抑えるような設計がなされているとしても、当該暗号資産の計算単位は本邦通貨もしくは外国通貨をもって表示されておらず、発行者等が法定通貨による買取りを約束したものではないから、通貨建資産には該当しないと考えられます。

したがって、不特定の者に対して使用でき、また、不特定の者と売買・ 交換ができるかが問題となるところ、ブロックチェーン上で発行されるステーブルコインは特別なシステム上の制約を掛けない限り、不特定の者に対して使用でき、また、不特定の者と売買・交換ができることから、法律上の暗号資産に該当すると考えられます。