音楽のサンプリングについては、以下のような場合が想定されます。
そこで、それぞれの場合において権利処理に際して留意すべき点が異なるので、それぞれ見ていきましょう!
まずサンプリングの対象部分には音楽著作物が含まれているため、サンプリングの抜粋部分をそのまま利用する場合には、原則としてその音楽著作物品及び楽曲に関する権利処理が必要となります。
具体的にはその音楽著作物に関する複製権について権利者から許諾を得る必要があります。
また、サンプリングによって創作された新たな音楽をインターネット上で配信する場合には、抜粋された音楽著作物に関する送信可能化権についても、権利処理を行う必要があります。
ここで「原則として」と述べたのは、例えば既存の音楽著作物の抜粋部分がとても短く、その抜粋部分には創作性が認められないような例外的場合にそもそもその抜粋部分には著作権法が保護する創作性のある音楽の著作物が存在しないため、著作権法上の権利処理は不要ということになるからです。
では、どのような場合に、その抜粋部分に創作性が認められないのでしょうか。
「○小節までの利用なら大丈夫」、「○秒までの 利用なら問題ない」等とまことしやかにいわれることもありますが、たとえ抜枠部分が短くてもその部分の曲や歌詞が特徴的なものであれば創作性は認められますし、逆に抜粋部分が一定程度長くてもその部分の曲や歌詞がありふれたようなものであれば、創作性は否定されることとなります。
一般論としては、抜粋部分が短ければ短いほど創作性を発揮できる可能性が低くなるため、 その抜粋部分に創作性が認められない可能性が高くなるということはいえますが、「○小節まで」とか「○秒まで」という形で形式的に創作性の有無を線引きすることはできません。
この問題は、ある音楽が全体として著作権法により保護される「音楽の著作物」に当たるとしても、その音楽をサビの部分、ワンコーラス、1小節といったようにどんどん細分化していった場合に、どの部分までであれば創作性が認められるのかあるいは認められないのかといった問題と類似する問題であり、結局、サンプリングの対象となる抜粋部分を個別具体的に検証するより他ないということになります。
上記の場合とは異なり、サンプリング抜粋部分をアレンジする場合には、著作権法上の「編曲」として「翻案」に該当するため、音楽著作物に関する翻案権の権利処理を行う必要があります。
「編曲」とは、「既存の著作物である楽曲 (以下「原曲」という)に依拠しかつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を 創作的に表現することにより、これに接する者が原曲の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物である楽曲を創作する行為をいう」としています。
したがって、サンプリングの抜粋部分をこのような形でアレンジして利用する場合には、原曲の著作権者より翻案権について権利許諾を受けておかなければならないということになります。
なお、その抜粋部分に例外的に創作性が認められない場合には権利処理が不要なこと、実務的な権利処理の方法等については、上記の通りです。
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