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利用規約「損害賠償●万円を上限」は無効?改正消費者契約法

IT企業のための法律

利用規約によくある規定

利用規約を見ると、「当社が損害賠償責任を負う場合1万円を限度額として賠償責任を負うものとします。」という規定があります。

この条項は、運営会社の責任を制限する、最悪損害賠償をされたときに責任の範囲が限定されるので、会社にとっては非常に有用な条項です。

しかし、ユーザーからすると、法律上、契約上は100万円を請求できるところを、1万円になってしまうわけで、損害賠償できる権利が制限されてしまいます。そこでこのような条項はOKなのでしょうか?

消費者庁「消費者契約に関する検討会報告書」

消費者庁「消費者契約に関する検討会報告書」では、契約条項のうち有効とされる範囲が不明確となり、消費者が法律上請求可能な権利行使を抑制されてしまうことや、軽過失の場合に損害賠償の限度額を定めることなく「法律上許される限り賠償限度額を〇万円」と定めた場合、本来は条項すべてが無効となる可能性があるところ、「法律上許される限り」といった規定によって、軽過失の一部免除を意図するものとして有効になる可能性があるという不当性が見られることが指摘されていました。

2022年5月改正消費者契約法

2022年5月に成立した改正消費者契約法では、損害賠償責任の一部を免責する条項のうち、軽過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていない条項を無効とする旨を定める8条3項が新設されました。

改正消費者契約法8条3項

事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)又は消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する消費者契約の条項であって、当該条項において事業者、その代表者又はその使用する者の重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないものは、無効とする。

つまり、損害賠償の上限規定を設けることは良いのですが、それはあくまで軽過失のみに適用される(故意または重過失の場合には適用されない)ことを明示する必要があるのです。

改正消費者契約法の施行後(2023年5月1日)は、単に「1万円を上限として賠償します」といった免責条項は、改正消費者契約法法8条3項に該当して無効となります。

よって、損害賠償を上限を求める場合には、以下のように規定すると良いでしょう。

本サービスの利用に関し当社が損害賠償責任を負う場合1万円を限度額として賠償責任を負うものとします。ただし、当社に故意又は重過失をある場合を除く

このただし書(赤字部分)があることで、条項が無効になることを防いでいるのです。