「Airbnb」をはじめ、様々なサービスが立ち上がり、シェアリングエコノミーという言葉を説明しなくても良いくらい、この言葉が浸透しています。
日本政府も、働き方改革実現会議が、平成29年3月28日に決定した「働き方改革実行計画」においては「柔軟な働き方がしやすい環境整備」として、副業・兼業の推進が挙げられています。
一方で、シェアリングエコノミーサービスを実際に提供する人は個人であり、従業員として企業に勤務している方も多いです。
多くの企業では、就業規則においては労働者の兼業・副業を禁止していることが多いのも事実です。
そこで、今回はシェアリングエコノミー普及と企業兼業・副業禁止をどのように扱うべきなのかを見ていきます。
平成29年4月14日に公表された「電子商取引及び情報財取引等に関する準則改定案」のうち「Ⅰ-7-8シェアリングエコノミーと兼業・副業に関する就業規則」(以下「準則改定案」という。)や過去の裁判例を参考に、検討してみます。
一般的に、副業禁止では以下のような点が問題になります。
この点、裁判例では、労働者は、基本的に、就業時間においてのみ、労務提供義務を負うのであり、就業時間外における活動は、使用者の労働契約上の権限が及ぶところではない。そのため、使用者が、兼業・副業を許可しない場合や、許可なく兼業・副業を行った者を懲戒処分の対象とする事が出来るのは、限定的に考える必要があるとされています。
具体的には、以下のような場合に副業が、許される傾向にあります。
また、経済産業省の「電子商取引及び情報財取引に関する準則でも、副業が以下のような点をふまえて、総合的に考慮されるとされています。
これらの考慮の結果、問題ないとされば、副業は許されることになるのです。
シェアリングエコノミーといっても様々なものがあります。
例えば、民泊などの自分の資産をシェアして、収益を得る場合には、一般的に肉体的・時間的拘束は限定的なものと評価される可能性が高いです。
そうすると「総労働時間が過重なものになってしまい、健康を害し、あるいは本業に支障をきたすことにならないか」という観点からは、当てはまらず、兼業・副業の規制は難しい可能性があります。
一方で、家事代行や育児代行等のスキルのシェアに係るシェアリングエコノミーサービスについては、時間的・肉体的拘束は生じます。
上記の総労働時間の観点からは、問題となりやすいですし、現在、就業している会社のスキルを生かして、サービスを提供するとなると「競業関係にならないか・秘密保持義務違反にならないか」との関係でも問題となる可能性があります。
今後、シェアリングエコノミーの普及に伴い、従業員の副業の意識は高まっていくことが予想されます。そのような中、企業が従業員の、副業を正面から禁止することは難しい時代になっていきます。
政府の「働き方改革実行計画」では、会社が副業者の労働時間や健康をどのように管理すべきかを盛り込んだガイドラインの策定や副業・兼業を認める方向でのモデル就業規則の改訂が指摘されているところです。
企業においては、今後の政府方針に注目し、自社就業規則の見直しをする必要があるのです。