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グレーゾーン解消制度とは、新事業を行おうとする者が、その事業を所管している官庁に対し、事業活動を規制する法律や命令の解釈・適用の有無について確認を求めることができる制度です。
新事業を行う際に、弁護士の専門家に相談すれば解決できることも多いですが、前例がない場合には、どうしても判断できないこともあります。そんなときに、グレーゾーン解消制度を使うと、その事業と法律に対する行政の見解を知ることができます。
このグレーゾーン解消制度は、結構活用されており、その結果は、経済産業省のニュースリリースで公表されています。
ここでは、実際のグレーゾーン解消制度が使われ、行政の回答結果を分析してみたいと思います。
まずは、まつ毛エクステンション等の実践型のスクールの開講を予定している事業者から、まつげエクステンションは、美容師法第 2 条第 1 項の「美容」に該当するかの照会がありました。
この照会について、経済産業省と厚生労働省が検討を行った結果、以下のような回答がありました。
まつ毛エクステンション施術に係る美容師法の取扱いが明確になりました
この回答によって、美容師免許を持たない者が、まつ毛エクステンション施術の一部を行った場合には、美容師法に違反となり、30万円以下の罰金に処せられます。
事業者より、電動アシスト機能を付加した6人乗りのベビーカー(以下「電動アシスト付ベビーカー」という。)の道路交通法及び道路運送車両法上の取扱いについて確認を求める照会への回答です。
関係省庁が検討を行った結果、以下の回答を行われました。
この回答の結果、当該電動アシスト付ベビーカーを使用する際には、道路交通法上、車道若しくは路側帯の通行が求められ、道路運送車両法上「軽車両」の保安基準(警音器の設置等)に適合する必要があることが明確になりました。
電動アシスト付ベビーカーに関する道路交通法及び道路運送車両法の取扱いが明確になりました
時間に応じて、光の強さ等を変化させるLED照明システムについて、屋内主体の生活が比較的多くなる高齢者等に対して、昼夜でメリハリのある健全な生活リズムをサポートする効果を標ぼうした当該システムが医薬品医療機器等法に規定するに該当しないと解してよいかという照会について、関係省庁が検討を行った結果、同法に規定する医療機器に該当しない旨の回答を行いました。
これにより、当該LED照明システムを高齢者施設等において、法律上の制約なく、広く展開することが可能となりました。
生活リズムサポートのためのLED照明システムに係る医薬品医療機器等法の取扱いが明確になりました
以上のように、グレーゾーン解消制度は、新商品・新サービスをリリースする前に、行政の法律的な見解をもらえる貴重な機会です。
ここでの注意点としては、実際の照会をするときは、具体的な法律・条文とともに、照会しないと答えてもらえないことです。
例えば、新サービスについて「何か法律的に抵触しますか」「●●法に抵触しますか」という質問では答えてくれません。
具体的に「●●法3条の『○○』に該当しますか」という程度に特定しないといけません。
また、行政は、照会されたことにピンポイントでしか、答えてくれません。照会されていない法律については、答えないので、事前にどの法律に抵触するのか、調べた上で、照会する必要があります。