ロボットの産業における役割が拡大しています。その流れは、医療にもきており、アメリカの医療機器メーカーが開発した内視鏡手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」が普及しつつあります。
3D内視鏡|手術支援ロボット「ダヴィンチ」徹底解剖|東京医科大学病院
日本でも、2009年から国内での製造販売が承認され、2012年には前立腺がんの全摘出、2016年からは腹腔鏡下腎部分切除術にも保険適用をなっています。
このようなことから、手術支援ロボットを用いた遠隔手術の可能性も高まってきています。
それらの問題となるのが、ロボットが人間に損害与えた場合に、誰が責任を取るのかという問題です。
以下、手術ロボットが、手術ミスをし、人間に損害を与えてしまったというケースを想定して、解説していきます。
参考記事:ロボットが問題を起こしたら誰が責任をとるの?【ロボットに関する法律的規制】
製造物責任法3条では、以下のように規定されています。
製造業者等は、…その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。
手術ロボットの「欠陥」が原因となって、患者の生命・身体が損なわれた場合には、ロボットの製造業者は、製造物責任を負うことになるのが原則です。
ここで問題なるのは「欠陥」の意味です。
欠陥とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいいます。
具体的な以下のようなことが「欠陥」と言われています。
「指示・警告上の欠陥」については、どこまでの注意書きをすればよいかが問題になります。
これについては、実際に使用する人が、どのような人なのかによります。
例えば、使用する人が、普通の人であれば、注意書きなどは、詳細に分かりやすく記載する必要があります。
ロボットの事例ではないですが、人工心肺装置についての裁判例では、当該装置自体は、商品上の性能は問題なかったものの「医療機器の製造者にも、機能の性能のみならず、その安全操作の方法、危険発生の可能性などを十分に試験し、これを操作者に具体的かつ十分に説明し、事故発生の危険性に関しては具体的な警告を発すべき義務」があるとしました。
手術ロボットの場合には、人間の人体を傷つける行為をするという観点からは、使用者に対し、詳細な説明をすることが求められる可能性が高いです。
製造物責任法は、製造業者等は「当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。」を証明した場合には、損害賠償を負わないとしています(開発危険の抗弁)。
この開発危険の抗弁については、日本において、実際の裁判で認められた例はありません。もっとも、医療機器などの科学技術が変化進歩していく分野では、この開発危険の抗弁が認められる可能性があります。
ロボット製造業者が、何かしらの欠陥があるロボットを販売した場合には、買主との間で問題が生じる可能性があります。
そもそも、瑕疵(取引通念上、通常有すべき品質・性能を有しておらず、欠陥がある状態)がある場合には、買主は売主である製造業者に対し、損害賠償等を請求できます(瑕疵担保責任)。
実際の事件になれば、ロボットについては、最先端の技術であり「取引通念上、通常有すべき品質・性能」とは何かということが問題になることが予想されます。
特に、手術ロボットのような高度な技術が必要なものは、多少のトラブルは一般的であるとされ、マシントラブルなどは「瑕疵」ではないとされる可能性もあります。
ロボット製造業者としては、ロボットは、高度な技術が必要なことから、買主との間で、契約によって、責任を制限することはできるのでしょうか?
例えば、上記の瑕疵担保責任については、契約によって、瑕疵担保責任を負わないとすることもできます。また、損害額を制限するような契約も有効です。
ロボット製造業者は、企業ではなく、一般消費者を相手にする場合には、上記のような責任を制限するようなことはできるのでしょうか?
消費者の場合には、消費者契約法が適用されます。
そして、消費者契約法では、以下のような製造業者側の責任を免除するような条項は、無効とされています。
このようにロボット製造業者は、消費者契約法については、気を付ける必要があります。