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損害賠償もある?ロボット(自動運転・医療ロボット)の欠陥とは【法律】

ロボット・AI・ドローンの法律

ロボットの欠陥とは

自動運転も含めたロボットについて「欠陥」あって、損害が生じた場合には、損害賠償などの事態が生じます。

それでは、ロボットの「欠陥」というのは、法律上、どういう場合をいうのでしょうか?

製造物責任法(PL法)の「欠陥」

「欠陥」については、製造物責任法に規定されています。

「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいうとされています。

つまり、「欠陥」とは、通常有すべき安全性を欠いている状態を言うのです。「欠陥」は、法律上に特段の定めがなく解釈に委ねられています。

以下の3類型に分類されることが一般的です。

  1. 製造工程において設計と異なった製造物が製造されたことによる欠陥(製造上の欠陥
  2. 製造物の設計そのものの欠陥(設計上の欠陥)
  3. 適切な指示・警告が伴わないことによる欠陥(指示・警告上の欠陥)

(1)製造上の欠陥

製造上の欠陥とは、製品の製造工程における不具合により、設計仕様に合わない製品が製造され、同様に製造された他の製品よりも危険な状態にあることをいいます。

このような欠陥は、製造業者等が厳格な品質管理を実施しても、発生することを完全に防止することは困難です。

AI・ロボットにおいては、設計された仕様に合わないロボットが製造されてしまった場合等が想定されるが、この場合には、AI・ロボット固有の問題ではなく、一般的な機械類等と同様に判断されることになるものと考えられます。

(2)設計上の欠陥

仮に設計仕様に合致する製品が製造されたとしても、そもそも設計段階において通常有すべき安全性を欠く仕様とされている場合も想定され、これを設計上の欠陥といいます。

AI・ロボットにおいては、設計上の欠陥として、AIやアルゴリズムそのものに設計上の欠陥があるとされる場合(例えば一定条件下において極めて危険な挙動を行うことがあらかじめプログラムされている場合、他社で採用されている安全確保措置と比較し、あるいは当時の議論または技術力に照らして不十分と思われるものが実装されていたが、これに合理的な理由がない場合響)が想定されるのではないかと思われます。

(3)指示・警告上の欠陥

製造物の設計・製造のほか、指示・警告が不十分・不適切である場合も想定され、このような場合は、指示・警告上の欠陥の問題となります。

AIが搭載されたロボットが予測不可能な挙動をし得ることが想定されているにもかかわらず、その点について適切な指示・警告を欠いた場合には、指示・警告上の欠陥となります。

自動運転・医療ロボットにおける欠陥とは

自動運転自動車に想定される欠陥

通常の自動車の構成部品に加えて、自動運転自動車に盛り込まれる重要な技術として、カメラ、レーダー、高精度測位端末および自動運転システムによる自動制御等が挙げられ、これらについての欠陥が問題となることが考えられます。

とはいえ、製造物責任を追及する消費者にとっては、その原因の究明が困難であることが多いものと想定されます。

この点、例えば、自動運転自動車が起こした事故が、人間が運転していれば到底起こり得ない事故であれば、欠陥が容易に認定される場合もあるかもしれないですが、当該事故が人間が運転していた場合においても起こり得るものであったときは、欠陥と認定することが困難な場合もありえます。

また、事故の原因が、自車のみならず相手方となる自動車や歩行者の挙動にある場合もあり、コントロール不能なこれらの挙動をどこまで予測して設計しなければ欠陥になるのかという点は非常に難しい問題です。

また、提供された地図データおよび位置データに問題がある場合には、部品の性能も含めて、どの程度の精度を有する必要があるか等といった問題も生じます。

医療ロボットの欠陥

例えば、モニターをみながら、ロボットアームを利用してメスを使用するような手術支援ロボットであれば、医師などの専門家が使用することが想定されており、医師が有する知識や技術が前提となることから、欠陥の判断は他の消費者向け製品に関する判断とは異なるものになると考えられます。

今後は、例えばパワーアーム等の人間の数倍の力を発揮するロボットを介護の現場に導入することや、医療において医師等の手を離れたAIによる自動手術が可能となるとすれば、より医療ロボットの欠陥が問題となるケースが増えるのではないかと思われ、今後の注視が必要です。

ロボットの「欠陥」の判断は、注意が必要

以上のように、ロボットの欠陥については、これまでの製造物とは異なる判断が必要な場合が多いです。

事業者も、どこまでやっておけば、「欠陥」と言われないかは、判断しておく必要があるのです。