オンラインゲーム等のアカウント、キャラクター、アイテム、ゲーム内通貨を現実の通貨で売買することを、リアルマネートレー(RealMoneyTrade、以下「RMT」)といいます。
RMTにより、購入者は、プレイ時間を節約してアイテム等を取得し、他のプレイヤーよりも優位にたつことができますし。販売者は、自身のアカウントやアイテム等を削除せずに換金することができます。
他方、RMTによる弊害も生じています。たとえば、購入者が、現金を支払ったにもかかわらず、相手からアイテム等がもらえないといった詐欺が起きているのです。
また、販売者の中には、ハッキング等の不正な手段で他人のゲームアカウントを取得して販売している者や、BOT(プログラムで自動制御されているプレイヤー)やチート(ゲームプログラムを改造すること)によってレアアイテムを取得販売している者など、ゲームメーカーの意図しない方法でアイテム等を販売している者が存在します。
あるゲーム会社の元従業員が、ゲームを管理する装置に不正アクセスし、ゲーム内通貨を作り出して業者に販売していたとして、不正アクセス禁止法違反により立件されています。
上記に加え、ゲームの内容によっては、RMTを利用する者と、他のユーザーとの間で格差が生まれ、不満を感じたユーザーによるゲーム離れが生じうる。また、ゲームメーカーにとっては、ガチャや有料アイテムなどの課金で得られるはずだった収益が得られなくなる。
現状、国内において、RMT自体を明確に禁止する法律は存在しません。なお、ゲームとは分野が異なるが、ライブイベント等に関しては、一定の要件のもと、そのチケットを転売することが禁止されています(チケット不正転売禁止法)。
また、ゲームによっては、ゲームメーカー側がRMTを許容し、それを売りにしている場合もあります。
加えて、対戦ゲームなど、ユーザー間で優劣を競うゲームの場合は格別、個人が楽しむ範囲であれば、ゲーム内のアイテム等をどのように手に入れ、どのように遊ぶかは、その人の自由という考え方もありえます。
そうするとRMTを規制するかは、RMTによって生じる弊害の有無・程度、ゲームメーカー側のビジネス、アイテム等を購入したゲームユーザーの自由と公平性などを考慮したうえでの判断することになります。
なお、プレイヤーの操作のみでは到達しえない高い数値のパラメータ等を設定できるメモリーカードが販売されていた事案おいて、裁判所は、同メモリーカードが、ゲームのストーリーとして本来予定された設定を超えさせているとして、ゲームソフトの同一性保持権侵害にあたると判断しています(最判平成13年2月13日[ときめきメモリアル事件])。
同判例の射程は定かでないものの、たとえば、チートによって、ゲームの本来予定されたシナリオを大きく変更するようなアイテムを作成している場合、同様に同一性保持権侵害と判断されるかもしれません。
なお、2014年、10代の学生らが、あるオンラインゲームの不正なプログラムを使用して、有料アイテムの無料化や武器を極端に強くする等、通常のゲームではできない動作をさせたとして、電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法234条の2)の容疑で書類送検されています。