権利処理が複雑化するのが、ライブイベントの二次利用です。
たとえば、映画であればクラシカルオーサー(作家たち)→モダンオーサー(監督など)という、二重の権利者がいるのですが、これがライブイベントの中継放送を念頭に置くと、劇作家などの作家たち→舞台・イベントの作り手たち→その映像化の作り手たちと、3段階となります。
ディレクターも、もともとの舞台の演出家と、映像のディレクターがいるのです。
また映像の世界ほど権利者が組織化されてもいなければ、権利の集中処理が普及してもいない。たとえば、舞台脚本家の全国組織である日本劇作家協会は、会員の著作権管理業務はおこなっていません。
一方で放送・配信・ライブビュー、さらには劇場用映画へのリメイク(ハリウッドを夢中にさせた「シカゴ」「レ・ミゼラブル」……)、関連の番組やイベント、何よりライブ関連の各種グッズと、いまや舞台やコンサートの二次利用ビジネスは世界的な活況にあります。
音楽コンサートなどは、各種グッズの売上は収入の大きな部分を占めます。
舞台公演・ライブイベントは、まずはそれを構成する戯曲・台本や音楽の著作物の上演・演奏される場です。
よって上演・演奏やその二次利用には当然権利者の許諾がいります。また、舞台美術のうち装置デザインも著作物であるケースが多いです。舞台衣装や照明デザインなども著作物とされ、著作権の対象になります。
舞台演出家やプロデューサー(制作者)が、舞台公演という著作物の著作者とみなされるかは微妙ですが、ただ少なくとも演出家は、現行法上は「実演家」としての保護を与えられます。
音楽も、ライブイベントでは(特にその二次利用では)複雑でリスクも多い領域です。そもそも、ミュージカル曲などを「演劇的に」演奏する権利である「グランドライツ」は欧米では歴史的に集中管理されず、JASRACなどの許諾では上演できない扱いが通常です。
そのため、二次利用でも権利処理はしばしば複雑化します。イベント用に依頼した曲は、JASRACの管理対象からはずして「買取り」的処理を可能とします。なので、誰が権利者か、誰にお金を払うかは専門的な調査が必要になります。
舞台では時には大胆におこなわれるパロディ、アレンジも、それが舞台中継など二次利用される場合には許容されないおそれがあります。(そもそも舞台の時点では捕捉されにくいという事情はある)。
過去の舞台映像を未来の世代に伝えるためのデジタルアーカイブの活動は重要だが、権利者団体の未発達や加入率の低さが影響し、権利者不明の作品は多いです。これも、注意が必要な理由です。