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【利用規約作成】利用規約で「損害賠償請求が退けられた判例」をIT弁護士が解説【2023年9月加筆】

利用規約の法律

利用規約作成が損害賠償を退けた!

Webサービスといえば、「利用規約」を作成することが必要です。そうはいっても正直、利用規約を作成して、どのくらいの意味があるのと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本日は、利用規約を作成したことにより、ユーザからの損害賠償を退けた例をご紹介します。

事案としては、ユーザが、ウィルス対策ソフトのインストールしたことにより、PCが作動しなくなり、損害が発生したとして、ユーザーがウィルス対策ソフト販売会社に対して「約1000万円」の損害の賠償を請求した事件(平成26年2月18日東京地方裁判所判決)です。

この事件で、裁判所は、利用規約が規定されていて、ユーザがこれに同意していたことを理由に、ユーザ側の損害賠償を退けたのです。この判決は、事業者が、利用規約を作成する上で、非常に参考になりますので、見ていきましょう。

ユーザは、利用規約に拘束されるのか

この裁判の争点の一つとして、このソフトウェアは、インストール時に、利用規約が表示され、同意ボタンをクリックすることでインストールが開始する仕組みになっていました。

ユーザは、同意ボタンを「ソフトウェアをインストールするためには利用規約に同意せざるを得ないため、意図に反して、やむを得ず、同意ボタンを押さざるを得なかった」と主張し、「同意ボタンのクリックは強制されたものであるから、ユーザーは利用規約に拘束されない」と主張しました。

通常、Webサービスの利用規約は、利用規約が表示され、同意して初めて、サービスが開始されます。しかし、実際、利用規約を読んでいる人は稀で、多くの人は、無意識のうちに同意してしまうのでないでしょうか。

では、このような利用規約は、ユーザに対して、効力があるのでしょうか?

利用規約が効力を有するためにはどうすべきか

利用規約が効力を有するためには、どのようにすればよいのでしょうか。

経済産業省が定める「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」では、利用規約に効力を持たせるためには、以下のような措置を講じる必要があります。

これは、あくまで経済産業省の指針であって、判例ではありませんが、裁判になったときに重要な指針になっていることは間違いありませんので、事業者は注意する必要があります。

Webサービスの申込みの前に利用規約への同意のクリックをさせる

よく見る利用規約の同意方法です。利用規約を表示して、同意のクリックをしてもらうという方法です。

利用規約の表示は、全文表示でもよいですし、利用規約をスクロールさせる形でも大丈夫です。

利用規約へのリンクを設置しWebサイト利用規約を閲覧できるようにする

同意のクリックは必要なく、利用規約に効力を持たせるで、Webサービスの申込み画面のわかりやすい位置に、利用規約へのリンクを設置し、利用者がいつでも容易にサイト利用規約を閲覧できるようにするという方法です。

同意のクリックが必要なくなり、離脱率が下がるので、事業者にとっては、やりやすい方法です。しかし、この方法でもよいとされたのは、最新版の「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」であり、過去の準則では設けられなかったものです。

また、この方法が本当に裁判になった場合でも、契約としての効力が生じるかは、定かではありません。事業者としては、なるべくなら、利用規約を表示し、同意のクリックさせる方法がよいでしょう。

利用規約が、契約としての効力を生じない場合

利用規約を単に定めるだけでは、契約の効力が生じません。

「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」では、以下のような場合には利用規約の効力が生じないとされています。

  • Webサイト中の目立たない場所にWebサイト利用規約が掲載されているだけで、Webサイトの利用につき、Webサイト利用規約への同意クリックも要求されていない場合

事業者としては、せっかく利用規約を作成しても、効力が認められないなんて自体になりかねませんので、注意が必要です。

利用規約の有効性について裁判所の判断は

話を今回の判例に戻しましょう。今回の裁判では、ソフトウェアの利用規約について、利用規約が表示され、同意クリックがされて、初めて、インストールが開始されるものでした。

そのような仕組みになっていたため、裁判所としても、利用規約は効力があると判断しました。

事業者としては、利用規約が表示され、同意クリックがされていれば、利用規約に効力があることが明確になったといえます。

利用規約の内容について

今回の利用規約では、以下のような内容が記載されていました。

  • 「本件ソフトウェアを現状のまま使用許諾する。」旨の条項
  • 「本件ソフトウェアがどのようなパソコン環境の下でも正常に作動することを保証するものではない。」旨の条項
  • 「本件ソフトウェアに関する一切の損害賠償は、購入価格を上限とする。」旨の条項

これらの条項は、どのようなWebサービスでも、事業者のリスクを減らす上で、必須の項目です。

この裁判では、上記のような事業者の有利な条項が有効なのかが争われましたが、有効であると判断されました。

BtoCサービスの場合は、要注意

上記の利用規約の内容についての判断は、BtoBサービスの場合です。

BtoCサービスの場合には、消費者契約法という法律があり、消費者保護の法律があります。そのため、以下のような条項は、無効になる可能性があります。

事業者が一切責任を負わない旨の規定

利用規約は、事業者が一方的に定められるため、事業者としては、一切責任を負わない旨を規定したいところです。

しかし、BtoCサービスでは、消費者契約法「消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項」は無効とされています。

そのため「一切責任を負わない」旨の利用規約を設けても、消費者契約法により無効とされてしまう可能性が高いですので、注意が必要です。

事業者の故意、重過失による損害については適用されない

BtoCサービスに関する利用規約では、損害賠償の額に上限を設けても、消費者契約法上、事業者の故意や重過失による損害については、上限規定が無効になります

利用規約は、Webサービス事業者を守る武器

以上のように、利用規約は、きちんと定めれば、裁判でも認められ、事業者を守る武器になります。

ただし、法律に則った形で、規定しないと効力が生じないといった自体になる可能性があります。きちんと法律に則った形で、規定し、運用するようにしましょう。