フリマアプリなどのCtoCサービスが、増えてきています。メルカリをはじめとして、CtoCサービスのプラットフォーム事業者が、好調なことも、後押ししている原因だと思います。
CtoCサービスのプラットフォーム事業者としては、ユーザー同士の売買契約を仲介しているにすぎません。
そのようなプラットフォーム事業者に、どのような法的責任が生じるのでしょうか?
フリマアプリのプラットフォーマーとして、ユーザーによる違法行為に関して、法的資任を負うことがあるかどうかが問題となる典型的な場面について、経済産業省が 2018年7月 27 日に改訂・公表している「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」で、有益な解説がなされています。
この準則では、プラットフォーム事業者は、「原則としてユーザー間の取引に起因するトラブルにつき責任を負わない」とされています。
つまり、ユーザー同士の取引に直接関与しない形態のプラットフォーム上におけるユーザーの違法行為に関するプラットフォー マーとしての法律上の責任を原則として否定しています。
一方で、ユーザーが、偽物のブランド品等の違法性のある商品を販売しようとしている場合で、警察をはじめとする政府当局から 直々にこれを防止するように指示があり、かつ、これを実際に防止することができる立場にあったにもかかわらず、これを黙認したというような場合では、プラットフォーマーの側にそのような違法取引の実行に関して一定の関与があると認められるとして、プラットフォーマーが法律上の責任を負うことになる可能性があることになります。
また、上記の準則では、以下の裁判例も引用して、プラットフォーマーが不法行為責任を負う場合があることを認めています。
マーケットプレイスにおける商標権侵害、著作権侵害の物品の販売があったケースにおいて、商標権者(利用者ではない)がネット ショッピングモール運営者に対して店舗による商標権侵害の責任を追及した事案において、裁判所は、次のような判決をだしています。
ウェブページの運営者は、商標権者等から商標法違反の指摘を受けたときは、その侵害の有無を速やかに調査すべきであり、これを履行している限りは、資任を負うことはないが、これを怠ったときは、出店者と同様、これらの責任を負うものと解される
さらに、以下の場合には、CtoCサービスのプラットフォーマーも責任を負うとされています。
このようなプラットフォーマーは、単なる場の提供者ではないとして、ユーザー間で売買トラブルが発生した際に責任を負う可能性とされています。
以上のことを踏まえれば、プラットフォーマーとして、警察からの公的機関からの指示のみならず、権利者からの通告や他のユーザーからいわゆる「通報」が行われたことに よって、あるユーザーが法律に違反した行為を行っている、または行おう としていることを知るに至ったような場合には、ユーザーとの利用規約に基づき、すみやかにその商品の出品をマーケットから削除する。
そして、そのユーザーがこのような行為を複数回行っているといった場合には、当該ユーザーによる利用を一時停止、中止するといった対応を機敏に講じていくことができる運用フローを整備しておくことが、法的責任の回避のために重要です。
ユーザー間の取引について、詐欺、偽造品の販売、現金の出品等といった法令違反行為等があった場合におけるプラットフォーマーとしての法律 上の責任については上記のとおりです。
しかし、これらの法令違反行為とはいえないとしても、ユーザーその他の第三者から見て社会 的に妥当性を欠くと認められうる取引がある場合に、サービスの健全性が 害され、ユーザーがそのサービスを安心して利用することができなくなることが懸念されます。
このような点をふまえ、プラットフォーム内で違法または不正な取引が 行われた場合に、特定の出品に関してその出品停止や、特定のユーザーの利用停止をすることが必要になります。
たとえば、フリマアプリ大手のメルカリでは、フリマアプリ「メルカリ」 のサービス健全性維持のための取組みとして、利用規約において、利用規約に違反したユーザーの登録の取消しや利用停止といった内容を定めています。
また、過去に発生した違反行為を分析して不正検知を行 う人工知能(AI)等の新技術、盗品であると警察の確証が得られた商品については盗難にあった被害者に対して損害額の補填を行うしくみの導入を検討しています。