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クラウドファンディングのプラットフォーマーは、特定商取引法の適用はあるのか【2022年11月加筆】

IT企業のための法律

特定商取引法とは

特定商取引法は、訪問販売・通信販売等の特定商取引を公正にし、及び購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護することを目的として制定された法律です。

購入型クラウドファンディングのプラットフォーマーと特定商取引法

一方で、購入型クラウドファンディングにおいては、商品・サービスの取引に係る契約は資金需要者と資金提供者との間で直接締結されるように設計されることが一般的であり、あくまで取引の「場」を提供するにすぎないプラットフォーマーは、当該取引について特定商取引法の適用を受けるものではありません。

ただし、プラットフォーマーは、以下の2つの観点から、特定商取引法の適用に注意する必要があると考えられます。

 資金需要者とプラットフォーマーの間の取引が通信販売に該当する可能性

1点目として、資金需要者とプラットフォーマーの間の取引が通信販売に該当する可能性があるという観点があります。

すなわち、資金需要者が商品・サービスをプラットフォームに出品する際には、プラットフォーマーとの間で出品サービスの提供(プラットフォーマー→資金需要者)とその対価としての手数料支払(資金需要者→プラットフォーマー)に関する契約が前提となるところ、このような契約は「役務提供契約」に該当します。

そのため当該契約がすべてインターネット上で完結するとする場合には、かかる取引方法が「通信販売」に該当する可能性が高いということです。

また特定商取引法は、購入者等が営業目的等で契約するものについては通信販売規制の適用を除外していますが、購入型クラウドファンディングにおいては個人が資金需要者となって出品している例もあり、出品者が必ずしも営業目的で出品契約しているとは限りません。

そのため、プラットフォーマーとしては、企業による出品に限り認めているといった場合でない限り、特定商取引法の適用除外を前提とした対応を行うことは難しいといえます。

したがって、購入型クラウドファンディングのプラットフォーマーとしては、資金需要者との間で「通信販売」を行うものとして、特定商取引法の各義務を遵守しておくことが穏当な対応と考えられます。

この場合は、特定商取引法に基づく表示を記載する必要があります。

資金需要者に特定商取引法の義務を遵守させる観点

資金需要者に特定商取引法の義務を遵守させるためのプラットフォーマーの責任の観点があります。

購入型クラウドファンディングにおける資金需要者は、特定商取引法における通信販売規制を受けることが多く、その場合、広告に一定の事項を表示する義務等の多くの義務を負うこととなります。

かかる義務は、一義的には資金需要者自身が負うものですが、プラットフォーマーが商品・サービスの広告を表示するインターネットサイト等を提供する場合には、現実的には、資金需要者としては、当該インターネットサイト等において表示義務のある事項を表示する機能等がなければ義務を履行できないなどの不都合が生じます。

そして、かかる不都合により資金需要者において特定商取引法違反が生じた場合には、プラットフォーマーとしても、当該違反はプラットフォーマーが提供するシステム・機能に基づくものであるとして資金需要者から責任追及を受ける可能性があります。

また、かかる特定商取引法違反により資金提供者に損害が生じた場合には、必要事項の表示機能等を提供していなかった点に責任があるとして、資金提供者からプラットフォーマーに対して責任追及がなされる可能性も否定できません(クラウドファンディングの場合、資金提供者が多数に上り、集団訴訟となる可能性があるという点も考慮が必要です)。

そのため、プラットフォーマーとしては、資金需要者に対して適切に特定商取引法の義務を遵守させる観点から、提供するインターネットサイト等において資金需要者が特定商取引法の義務を果たすことを可能とする機能等を提供しておくことが望ましいです。