パロディといえば、他人のコンテンツを何らかの形でマネをして、新たな作品を生み出すことをいいます。法律上は、「パロディ」の定義はありません。
外国の規定をみると、フランスでは、パロディに関する明文の個別の権利制限規定が置かれています。
また、米国においては、パロディの一部はフェアユースとして適法な著作物の利用であると認められています。
このような外国の例もふまえたうえで、日本においては、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会パロディワーキングチームが、「パロディワーキングチーム報告書」において、日本におけるパロディに関する立法的解決の必要性について検討したことがあります。
その結論は、以下のようになっており、パロディに関して、法律を制定するのではなく、あくまで現行法で対応していくことが定められました。
社会において著作物の利用形態が急速に変化している中で、著作物としてのパロディの在り方や、その権利意識について権利者・利用者ともに急速な変動が見られることも併せ考慮すると、少なくとも現時点では、立法による課題の解決よりも、既存の権利制限規定の拡張解釈ないし類推適用や、著作権者による明示の許諾がなくても著作物の利用の実態からみて一定の合理的な範囲で黙示の許諾を広く認めるなど、現行著作権法による解釈ないし運用により、より弾力的で柔軟な対応を図る方策を促進することが求められているものと評価することができる。
パロディについて、法律上、問題となりうるところとしては、以下の点が問題になります。
「翻案」とは、著作物を翻訳、編曲、変形、翻案する権利のことをいいます。
例えば、小説をドラマ化・マンガ化・アニメ化・映画化する、マンガをゲーム化する、楽曲を編曲する、ソフトウェアを改良するといった行為が含まれます。
これは、コンテンツやそこに表現をマネした場合には、翻案権侵害になりますが、アイデアやコンセプトなどがマネとしたとしても、翻案権侵害にはなりません。
この点に裁判例では、パロディについて、判断が分かれた裁判例があります。
「チーズはどこへ消えた?」のパロディ本である「バターはどこへ溶けた?」の発行等の差止めが問題になった事例です。
ここでは、「翻案が認められる表現部分の中には、表現が全く同一のものや登場人物の名前ないしチーズかバターかが違うだけでその他の表現が同じ部分が少なからず存在すること」などを根拠として、翻案権侵害を肯定しました。
また、「本件著作物についての具体的な記述をそのままあるいはささいな変更を加えて引き写した記述を少なからず含むものであって、表現として許される限界を超えるものである。」としました。
このように、具体的な記述について、同じものであると、著作権侵害が認められます。
「完全自殺マニュアル」の表紙のパロディと容易に認識できるように作成された「完全自殺マニア」の表紙について翻案権侵害の成否等が問題となった事例です。
裁判例では、「一般的には書籍カバーにおける文字や絵柄の配置及び構図の選択の幅は狭」いということを前提にしつつ、両カバーが同一性を有する点は「アイディアなどの表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分」であり、「両カバーの共通点と相違点及びそれらの創作性の有無又は程度に鑑みると、全体的・総合的な観察においても、両カバーに接する者がそれぞれのカバーの全体から受ける印象は相当に異なる」として、翻案権侵害を否定しました。
パロディにおいては、原作品を改変して利用することが多いので、同一性保持権に注意する必要があります。
同一性保持権侵害は、判例でも、「他人の著作物における表現形式上の本質的な特徴を維持しつつ、その外面的な表現形式に改変を加える」場合に成立し、「他人の著作物を素材として利用しても、その表現形式上の本質的な特徴を感得させないような態様においてこれを利用する行為は、原著作物の同一性保持権を侵害しない」とされています。
判例では、雪の斜面をシュプールを描いて滑降する6名のスキーヤーを俯瞰するような位置で撮影した画像で構成されたカラー写真(「本件写真」)の一部を切除し、シュプールの起点に当たる雪の斜面上縁に巨大なスノータイヤを配置し、これを白黒の写真に複写して作成した合成写真(「本件モンタージュ写真」)について、同一性保持権侵害等が問題となった事例あります。
最高裁は、「本件モンタージュ写真は、これを一瞥しただけで、本件写真部分にスノータイヤの写真を付加することにより作成されたものであることを看取しうるものであるから、〜シュプールを右タイヤの痕跡に見立て、シュプールの起点にあたる部分に巨大なスノータイヤ一個を配することによって本件写真部分とタイヤとが相合して非現実的な世界を表現し、現実的な世界を表現する本件写真とは別個の思想、感情を表現するに至っているものであると見るとしても、なお本件モンタージュ写真から本件写真における本質的な特徴自体を直接感得することは十分できるものである。」として、同一性保持権侵害を肯定しました。
このように、元のコンテンツの中心となる表現について、マネをする、パクるような行為については、同一性侵害に当たるといえます。
上記のように、パロディについては、少なからず元のコンテンツを参考にする、マネをする部分が出てきます。そうなると、著作権侵害という問題が起こりうるのです。
パロディをする場合には、著作権法上、問題がないのか、慎重な判断が必要になるのです。
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