この記事の目次
オンラインゲームでは、ゲームの利用者が、ゲーム内で使えるコインやポイントを購入し、これを使ってアイテム交換したり、イベントに参加できる仕組みが設けられている場合があります。
このようなゲーム内ポイント・通貨には、資金決済法の「前払式支払手段」に該当するのかが問題になります。
前払式支払手段は、以下の要件を満たすかどうかで判断します。
上記1は、例えば、「100ポイント」「アイテム●個」といった形で金額や数量が記録されること
上記2は、現金などの対価を得て発行されること
上記3は、そのポイントやアイテムが、他の商品やサービスの提供に使用できることをいいます。
よって、ユーザーが、現金でゲーム内通貨・ポイントを購入する場合には、上記3要件を満たすので「前払式支払手段」に該当するのです。
それでは、ゲーム内通貨で、アイテムやポイントを購入した場合に、その「アイテム」や「ポイント」(二次アイテム・通貨)は、資金決済法上の「前払式支払手段」に該当するのでしょうか。
「二次アイテム・通貨」についても、「●●コイン」「●●アイテム」と表示されているので、「(1)金額等の財産的価値が記録されている」は、要件として満たします。
また、「前払式支払手段」に該当するようなゲーム内ポイントや通貨を使い、購入しているので、「金額・数量に応じた対価を得て発行されていること」という要件も満たします。
問題は、「代価の弁済のために使用できること」という要件が満たされるかどうかですが、これは、「二次アイテム・通貨」が、どういう用途で使用できるかによります。
つまり、その二次通貨・アイテムを使って、他のアイテムと交換したり、事業者からサービスを受けられるといった用途があれば、この要件も満たすことになり、「二次アイテム・通貨」も、資金決済法上の「前払式支払手段」といえます。
昨年話題になったLINEゲーム内の「二次通貨・アイテム」の「宝箱の鍵」も、関東財務局から「前払式支払手段」と認定されました。
「ポイント制」・「仮想通貨」といっても、2種類に分かれています。そのため自社が、どちらに当たるのかを見極める必要があります。
「自家型前払式手段」とは、発行者に対してのみ使用できる「通貨・ポイント制」をいいます。
例えば、ウェブサービス会社が、自社の運営するサービス内でのみ、利用できる「ポイント」を発行する場合がこれに当たります。
この場合には、発行している前払式支払手段の未使用残高(前払式支払手段の総発行額-総回収額)が毎年3月末あるいは9月末において、1,000万円を超えたときは、内閣総理大臣への届出が必要となります。
もう一つが、第三者前払式手段です。これは、発行者以外の第三者の店舗(加盟店、フランチャイズ店等)においても使用することができる前払式支払手段です。
この典型例が、PASMOやSuicaなどです。このような、第三者前払式手段は、発行前に内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。
発行するポイントなどに、発行者の名称などの一定の事項をウェブサイト内に表示しないといけません。
ポイントの未使用残高が1,000万円を超えるときには、未使用残高の2分の1以上の金額を営業所の最寄りの供託所に供託しなければなりません。
期限は、未使用残高が1,000万円を超えた日から2ヶ月以内です。つまり、500万円以上のキャッシュが出ていくことになります。
「ポイント」などの前払式支払手段を発行するには、定期的に行政に報告書を提出しなければなりません。
つまり、行政の監督を受けることになります。
この資金決済法の「前払式支払手段」にまつわる義務を回避する方法があります。それは「ポイント」の有効期限を6ヶ月以内にすることです。
オンラインゲームでは、ユーザに、プレゼントをあげることがあると思います。そのときは、景品表示法に気を付ける必要があります。
例えば、ユーザ全員にアイテムなどをプレゼントするという場合には、法令上「総付景品(そうづけけいひん)」と言います。
総付景品においては、景品表示法の適用があり、プレゼントする商品の価額は、購入した商品の取引価額の10分の2の金額(当該金額が200円未満の場合、200円)の範囲内とされています。
もっとも、購入者全員を対象とするが、購入額の多少を問わないで景品類を提供する場合の「取引価額」は、原則として100円とするとされています(「一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」の運用基準)。
具体例を上げると、10000円の商品・サービスを買った人全員に、ある商品をプレゼントする場合に、プレゼント商品の価格は、2000円以内のものにしないといけないということです。
また期間中、金額に関わらず、自社商品を買ってくれた人全員に、ある商品をプレゼントという場合には、プレゼントする商品は、200円以内にしないといけないということです。
オンラインゲームを作っているとき、やはり多くのユーザーを集めたいですよね。そんな時、ついつい「実際よりもよく見せたい」と思うもの。しかし、この「盛ってしまう表現」が、法律違反になってしまうことがあります。
よくあるのが「二重価格表示」です。二重価格表示とは、定価5,000円を今だけ2,000円といった表記や通常価格に赤線が引かれていて、特別価格として安い金額が書かれているものです。
この消してある元の価格が、販売実績のない価格であれば、景品表示法に違反することになります。
販売実績のない価格ですが、一度も販売したことのない価格は、間違いなくアウトです。販売実績がある商品についても、最近の相当期間内に販売実績のない価格を、比較対照価格に表示する場合には、その価格がいつの時点で、どの程度の期間販売されていたものか正確に表示しない限り、景品表示法に違反するおそれがあります。
そして、「最近の相当期間に販売実績のない価格」かどうかは、以下の基準で判断するとされています(公正取引委員会 「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」 )。
このように、むやみに二重価格表示をすると、法律違反になってしまうのです。