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IT専門弁護士が解説!「NAVERまとめ」が運営方針を変更して著作権法的にどうなったのか?

著作権に関する法律

「NAVERまとめ」は著作権法的にOKなのか?

昨年の「WELQ」問題以降、コンテンツの著作権に対する問題がクローズアップされています。コンテンツの著作権といえば「NAVERまとめ」。この「NAVERまとめ」は、著作権的にどうなのでしょうか?

昨年12月28日には、運営元であるLINE社から、「NAVERまとめ」に関する昨今の報道を受けての当社見解についてが発表されました。

「NAVERまとめ」とは、ご存じの通り、インターネット上にある情報をまとめて、投稿できるサービスです。読み手としては、手軽に「まとめ情報」が見れて、便利という一面がありますし「まとめた側」も、PV数などに応じて報酬がもらえるため、面白い情報をまとめようと、凌ぎを削っています。

しかし「NAVERまとめ」は、他人のコンテンツを「まとめて」記事にしているという側面があるので、著作権法的に大丈夫なのかということが指摘されていました。

他人のコンテンツを無断で使用することは、当然、著作権法違反になりますが、著作権法上「引用」の要件を満たせば、大丈夫です。

引用の要件は、このブログでも、「まとめサイト(キュレーションサービス)事業者が気を付けるべき著作権侵害。」などで散々書いてきましたが、以下の点を考慮する必要があります。

  • 自分のコンテンツと引用部分の明瞭区分性
  • 自分のコンテンツが「主」で、引用部分が「従」の関係
  • 出典の明記
  • 他人の著作物を利用する側の利用の目的
  • その方法や態様、利用される著作物の種類や性質
  • 当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度

「NAVERまとめ」はご存じの通り、次にあげるように、適法な引用要件を満たさず、著作権に違反する記事が、圧倒的に多いのが実情です。

  • 引用部分である他人のコンテンツが「主」で、自分のコンテンツがない場合が多い(あっても、ごく少量)
  • 出典も明記されていないことが多い
  • 他者コンテンツで、報酬を得ている

運営元のLINEに対して法的責任はないのか?

このように、「NAVERまとめ」に投稿された記事は、著作権的に問題がある記事が多い。つまり、そのような記事を作成した人に、著作法に基づく法的請求をすることは可能です。

では、そのようなサービスを運営している「LINE」に対して、何かしらの法的請求をすることはできるのでしょうか?

「NAVER まとめ」には、削除申請することができます。ここでは、LINE社が削除が妥当だと考えれば、削除されることになります。

「NAVERまとめ」に関する昨今の報道を受けての当社見解についてによると、作成された全まとめ記事のうち33.7%(3本に1本)の割合で非表示処理済みということです。

それでは、LINE社に対して、著作権侵害を理由に法的請求ができるのでしょうか?

ここで、問題になるのは、著作権を侵害しているコンテンツを投稿しているのは「NAVERまとめ」のユーザーであり、LINE社は「NAVERまとめ」というプラットフォームを提供しているだけです。プラットフォーマーであるLINE社が、著作権侵害の責任を負うのでしょうか?

参考になる有名な判例が「クラブキャッツアイ事件」最高裁判所判決(昭和63年3月5日)で示された「カラオケ法理」というもの。

カラオケスナック店は、直接に権利侵害をしていなくても(1)管理していること(2)営業上の利益を有していることなどから、著作権侵害主体となりうるというものです。

そして近年では、著作権管理団体であるJASRACが、権利者に無許諾で動画がアップロードされていたため、動画投稿サイト「TVブレイク」を運営する会社を、著作権法違反で訴えたという事件がありました。

この点、判例(知財高裁平成22年9月8日)は、プラットフォーマーが責任を負う場合として、以下の事項を考慮するべきとしました。

  1. 侵害の過程における支配管理の程度
  2. 当該行為により生じた利益の帰属等

これらの点を考慮した結果、著作権侵害コンテンツを投稿した者とプラットフォーマーを同視できるかどうかを判断すべきとしました。この事件の判決では、動画投稿サイトTVブレイクの以下のような性質に着目しています。

  • 匿名で投稿できるため、投稿者が責任を問われにくい仕組み
  • 運営者は投稿動画が記録されるサーバを管理している。(運営の支配管理程度が強い)
  • サイト管理者は、投稿コンテンツのPVが増えればも収入が得られる仕組み(運営者も、利益を得ていた)
  • TVブレイクの全カテゴリーの動画の中で、約半数が著作権侵害コンテンツ(著作権侵害コンテンツの量も多い)

以上の事情から、TVブレイクというサービスは、「本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービス」であり、運営者も著作権侵害主体となると判断しました。

「NAVERまとめ」のLINE社はどうか?

これと比較してみると、NAVERまとめの場合は、以下のように、TVブレイクの仕組みを似ている点が多いです。

  • 投稿者は匿名で投稿でき、投稿者が責任を問われにくい仕組み
  • 投稿コンテンツのPVが増えればLINE社は広告収入が得られる仕組み

この他に、サーバ管理の有無や著作権侵害コンテンツの割合が、どのくらいによって、結論も変わりますが、上記判例を前提とする限り、LINE社も著作権侵害の責任を問われる可能性があります。

LINE社も著作権侵害の対応を実施

LINE社も批判を受けて、「NAVERまとめ」に関する昨今の報道を受けての当社見解についての中で、次のように説明しています。

権利者より著作権侵害のご申告をいただいた時点で当該「まとめ」で侵害の可能性があると“みなし”て先に非表示処理を行い、その後、当該「まとめ」の作成者に許諾の有無などの正当性を証明いただき、妥当であると判断される場合のみ、表示を再開する「みなし非表示対応」を開始いたしました。事後対応という点ではまだ課題が残りますが、権利侵害の事実確認について、権利者側の負担を軽減し、作成者側の負担とする対策です。

これにより、権利者の権利が保護されるのかは、今後の運用次第ということになるでしょう。

まとめサイトは法律に則って運用する必要

昨年のWELQ騒動以来、キュレーションサイトの運用については、世間の目が厳しくなっています。キュレーションサイト運営者は、法律に則り、運用するようにしましょう!