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共同研究開発のフィージビリティ・スタディ契約とは何か。契約の内容も解説【2022年12月加筆】

IT企業のための法律

フィージビリティ・スタディとは

共同研究開発の初期段階においては、共同研究開発契約を締結する前段階において、双方の製品、技術を評するための予備的なテスト等(フィージビリティ・スタディ/Feasibility Study)を実施し、その結果に基づいて、実際に共同研究開発を行うか否かを判断することがあります。

フィージビリティ・スタディは、特に共同研究開発に多くの経済的資源を投入する必要がある場合に、当該プロジェクトの実行可能性を事前に検討し、本格的な共同研究開発を実行すべきか否かを判断するために用いられます。

フィージビリティ・スタディ契約の内容

フィージビリティ・スタディ契約においては、概ね、フィージビリティ・スタディの目的、役割・費用分担、スケジュール 、 フィージビリティ・スタディ終了後のステップ等が合意されることが多いです。

フィージビリティ・スタディ契約の重要事項について説明します。

フィージビリティ・スタディの目的・対象

フィージビリティ・スタディ契約においては、評価の対象となる技術、製品等を特定し、フィージビリティ・スタディが何を目的に実施されるものであるのかを明確にするための条項を定めておく必要があります。

上記条項例では、「A社が製造技術を有するX物質を採用したB社のY製品」を評価対象とし「各々が保有する技術情報等を相互に補完する可能性とその具体的スキームを調査・検討する」ことを目的にフィージビリティ・スタディを実施することを明記しています。

第1条(目的)

A社及びB社は、A社が製造技術を有するX物質を採用したB社のY製品(以下「本製品」という。)の事業化のため、各々が保有する技術情報等を相互に補完する可能性とその具体的スキームを調査・検討するためのフィージビリティ・スタディ(以下「本調査」という。)を共同して行う。

フィージビリティ・スタディのための情報交換

フィージビリティ・スタディを実施するために必要な技術情報を相互に開示し合うことを定めた条項を規定します。

フィージビリティ・スタディを実施するにあたっては、両当事者で秘密性の高い情報のやり取りがなされるのが通常です。

秘密保持契約を締結したうえでフィージビリティ・スタディ契約を別途し、秘密情報の取扱いについては、秘密保持契約に従うとするケース、秘密保持契約を別途締結せずにフィージビリティ・スタディ契約において秘密情報の取扱いについて規定するケース等が考えられるますが、特に決まった形式があるわけではありません。

第2条(情報交換)

1  A社及びB社は自己が保有する以下の技術情報であって、本調査のために必要な範囲のもの(以下「本技術情報」という。)を相互に開示する。

A社の技術情報:X物質に関する技術情報
B社の技術情報:Y製品に関する技術情報

2  A社及びB社は相手方が開示する本技術情報について、A社及びB社が締結した■年■月■日付「秘密保持契約書」において規定する秘密情報として取扱う。

フィージビリティ・スタディにおける各当事者の役割分担

フィージビリティ・スタディにおいて、各当事者がいかなる活動を行うのか、具体的にいかなる項目の検証を行うのかなどを定め、各当事者の役割分担を明確にしておく必要があります。

第3条(役割分担)

本調査におけるA社及びB社の各役割分担は 、以下に定めるとおりとする。

①A社の役割分担
B社から開示を受けた本技術情報に基づく◆◆◆の評価・検討

②B社の役割分担
A社から開示を受けた本技術情報に基づく◇◇◇の評価・検討」

フィージビリティ・スタディのスケジュール・期間

第3条において取り決めた役割分担に基づき、各当事者が担当する各作業を実行すべき具体的なスケジュールを決め、フィージビリティ・スタディ全体をいつまでに完了させるかを定めた条項です。

フィージビリティ・スタディを進めていく中で、スケジュールの変更を要することも往々にしてあることから、第2項でスケジュール変更を要する場合にいかに対応するかについて規定しています。

第4条(スケジュール)

1  A社及びB社は 、前条にて定めた自己の役割分担を本契約別紙に定めたスケジュール(以下「本スケジュール」という。)に従って遂行し、遅くとも■年■月■日までに本調査を完了させることに合意する。

2  A社又はB社は、本スケジュール又は本調査の完了時期を変更する必要が生じた場合 、相手方に直ちに通知し、本スケジュールの変更の可否及び変更内容等について相手方と誠実に協議する。

フィージビリティ・スタディに要する費用負担

フィージビリティ・スタディの実施にあたって要する費用の負担を定める条項です。

前記第3条の役割分担に従って各当事者が費用負担すべきことを原則としつつ、役割分担や費用負担が不明なものが生じた場合には、協議により役割分担や費用負担を決定する旨を定めると規定することが必要です。

第5条(費用分担)

A社及びB社は、第3条にて定めた自己の役割分担を遂行するための費用を各々負担する。但し、いずれの役割分担及び費用負担であるかが明らかでない役割及び費用が発生する見込みが生じた場合には、A社及びB社が誠実に協議の上 、その役割及び負担の別及び割合を決定する。

フィージビリティ・スタディ契約は、きちんと規定する

上記のように、フィージビリティ・スタディ契約については、定めることがたくさんあります。

一般的な契約ではないので、きちんと条項を規定するようにしましょう!