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「食べログ」訴訟にみる口コミサイト運営者が気を付けるべき法的ポイント

写真を勝手に掲載された…損害賠償請求は、認められず…

口コミ投稿サイト「食べログ」に写真などを無断掲載され、「隠れ家」を売りにする事業戦略が妨害されたとして、大阪市内の飲食店が、運営会社「カカクコム」に店舗の情報削除と330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は2月23日、請求を棄却する(原告が負け)との判断下しました。

参考記事:「食べログ」訴訟、大阪の「隠れ家バー」敗訴 YOMIURI ONLINE

判決文によると、この飲食店は看板を出さず、「一見さんお断り」とするなど秘密性を演出していたとのこと。しかし、2012年11月、食べログに、この店の趣向を紹介する投稿があり、同社に削除を求めたが拒否されたため、訴訟を提起しました。

食べログについては、昨年9月に、札幌市内の飲食店が「批判的な投稿があり、売上が減少した」として掲載削除などを求めた訴訟で、札幌地裁は請求を棄却しています。

サイト運営者のリスク

上記裁判例は、請求が棄却されていますが…口コミサイト運営者としては、無視できないリスクです。

そこで、口コミサイト運営者は、訴えを提起されるリスクを回避するには、どうすればよいのでしょうか?

「食べログ」などの口コミサイト管理者も責任を負う?

例えば、「食べログ」を運営している「カカクコム」はサイトを運営しているに過ぎません。ユーザーが投稿した内容について、カカクコムは関係がないのではとも思われます。

しかし、そうとは言い切れないのです!

裁判例では、
①権利侵害の書き込みを知っていたにもかかわらず敢えて放置したような場合

または
②通常であれば、権利を侵害する投稿に気が付くべきであったと考えられるような場合
サイト運営者に対して、損害賠償責任が認められています。

じゃあ。どうする?!

そこで、サイト運営者としては、

  1. 権利侵害を把握するための適切な措置(通報フォームを設置する、パトロールを行うなど)をとっておく
  2. 名誉毀損のような他者の権利を侵害する書き込みがあった場合には、速やかに削除する

などの対策をすることが、必要になります。

投稿を削除した場合に、削除された人から、文句を言われたら…

投稿の削除をしてしまった場合…その投稿をした人からすると、自分の投稿が勝手に消されたことになります。
そうすると…「何勝手に人の投稿消してんだよ」といって、運営会社に対して損賠賠償などを請求されるかもしれません。

この点においては、利用規約において、権利を侵害する投稿については、
①禁止事項を明確に定めた上で、
②サイト運営者が投稿を削除できることや、
③削除について一切の責任を負わない旨を定めておく
ことで、回避できます。

口コミサイト運営者のリスクヘッジの手段

以上のように、サイト運営者のリスクヘッジの手段としては、

  1. 利用規約において、投稿を削除できること及び削除についての免責規定を定めておくこと
  2. 権利侵害となる投稿を発見するための体制を整えておくこと
  3. 権利侵害となる投稿を見つけた場合には速やかに削除すること

が挙げられます。

いずれにしても、口コミサイトをローンチする前の対策が必要になります。
法的な側面を意識しつつ、ウェブサービスを立ち上げることが大切なのです!