検索サービスを提供するプラットフォーム事業者は、ユーザーから、検索履歴、ウェブページの閲覧履歴、広告のクリック履歴、購買履歴、位置情報等の情報を収集し、検索結果の品質向上、マーケティング、ターゲティング広告等に利用する場合があります。
これらの検索履歴等は、当該情報から「特定の個人を識別することができる」とはできない場合であれば、「個人情報」 に該当せず、検索履歴等の収集が直ちに個人情報保護法との関係で問題となりません。
もっとも、検索履歴等と利用者の氏名や住所等を含むアカウント情報とを容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができる場合には、当該検索履歴等は「個人情報」に該当し、プラットフォーム事業者は、個人情報取扱事業者として個人情報保護法上の規制を遵守する必要がありません。
なお、2020年の個人情報保護法改正により、6ヶ月未満の保有であっても「保有個人データ」に該当することとなるため注意が必要です。
検索履歴等は、利用者の趣味嗜好や行動習慣と密接にかかわる情報であることが多いため、個人情報に該当しない場合であっても、個人のプライバシー保護の観点から適切に取り扱うことが必要です。
プライバシー権を正面から規定した法令は存在しないものの、裁判例上、プライバシー権の侵害に対しては損害賠償請求や差止請求が認められる場合があります。
各プラットフォーム事業者は、このプライバシー保護の観点も踏まえ、 様々な工夫を行っています。たとえば、Yahoo! JAPAN を運営するヤフー株式会社では、外部有識者からなるプライバシーに関するアドバイザリーボードを設置して、同社における個人情報の取扱いについての検討内容を公開しています。
他にも、株式会社NTTドコモが利用者の情報の取扱いに関する行動原則として「パーソナルデータ憲章」を公表し、プライバシー保護の体制を整備・運用することを掲げており、Google もパーソナルデータのダッシュボードを提供し、利用者が自己に関する情報やデータの管理等を一括して行うことができるようにするの施策を講じています。
このように利用者に対する説明を尽くし、そのプライバシーを尊重する取組みは、プライバシー権の侵害による法的責任を回避するためだけでなく、利用者や市場からの信頼を獲得するためにも重要であると考えられます。
公正取引委員会は、2019年12月17日 に、「デジタル・プラットフォーム事業者と個人情報等を提供する消費者との取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」を公表しています。
消費者がデジタル・プラットフォーム事業者から不利益な取扱いを受けても、消費者がプラットフォーム事業者の提供するサービスを利用するためにはこれを受け入れざるをえないような場合に、プラットフォーム事業者が消費者に対して優越的地位にあるとするという考え方を示しています。
そのうえで、同ガイドラインにおいては、デジタル・プラットフォー ムにおける「個人情報等の不当な取得」およびデジタル・プラットフォー ムにおいて取得した「個人情報等の不当な利用」は、「対価に対し相応でない品質のサービスを提供すること等により、消費者に対して、正常な商 慣習に照らして不当に不利益を与えることとなる」として、優越的地位の濫用となりうる旨が指摘されています。