サービス予約型プラットフォームの中には、掲載している店舗間で比較可能な点数や星の数、格付といった定量的な評価を付したランキング制度 を設けているものがあります。
レストラン、美容室、ホテル等の掲載店舗について、実際の利用者からの点数評価に基づくランキング制度を導入する際の注意点を解説しています。
一般的にランキング制度は、消費者が店舗を選択する際に役に立つもので、また店舗にとっても、ランキングの水準によって予約数や売上が左右される等、消費者への訴求手段としての効果があります。
このように消費者と店舗の双方にとって重要なランキング制度は、その公平性に対して消費者および店舗から一定の信頼を寄せられていることが前提です。
このようなランキング制度について、その店舗評価基準に基づき特定の店舗の評価を変動させること自体は、直ちに独占禁止法上問題となるものではありません。
しかし、市場において有力な地位を占めるサービス予約型プラットフォーム事業者が、合理的な理由なく、恣意的に店舗評価基準を設定・運用する場合には問題になります。
特定の店舗と他の店舗とで異なる評価の取扱いをする場合、当該行為によって、特定の店舗が競争上著しく不利になるなどの場合には、独占禁止法上差別取扱いとして問題となるのです。
また、店舗評価の算出方法の公平性が確保されない場合、店舗が自らの評価を恣意的に落とされるのではないかという懸念を抱くことで、サービ ス予約型プラットフォーム事業者が店舗を自己の営業方針に従わせやすくなるという効果が生じる危険があります。
このように、ラットフォーム事業者が、正当な理由なく、通常の店舗評価基準の設定・運用を超え、特定の店舗にのみ適用されるような店舗評価基準を恣意的に設定・運用等し、当該店舗の評価を落とすことにより、当該店舗に対し、自らに都合のよい料金プランに変更させるなどの行為は独占 禁止法上優越的地位の濫用として問題となります。
独占禁止法上の差別取扱いや優越的地位の濫用等の不公正な取引方法に該当しない場合であっても、店舗評価の際の重要な判断要素を明らかにせず不透明な状況で運用を行う場合には、そのランキング制度の情報は信用できない等といった事業上のリスクを負う可能性があります。
そのため、店舗の評価を掲載するサービス予約型プラットフォームでは、その評価の公平性を標榜し、また、透明性を確保・維持するための仕組みを構築しているのです。
例として、店舗がプラットフォームに対して支払う手数料の有無やその金額の多寡が店舗の評価に影響を与えることはないと明記しているものや、店舗評価の決定方法の一部を公開しているサービス予約型プラットフォームもあります。
店舗の評価方法の透明性を確保することは、独禁法上の観点及び上記の事業上のリスクを軽減する観点からも望ましいといえるのです。
しかし、一方で、店舗評価基準は、まさにサービス予約型プラットフォーム事業者の重要な競争手段であり、そのすべてを公開することは、公開された店舗評価基準を利用して、悪質業者が不正に評価操作を行うリスクもあります。
このため、プラットフォーム事業者は、アルゴリズム等のすべてを公開するのではなく、店舗の評価に関係する重要な要素について、店舗および 消費者に対して可能な限り明らかにし、店舗評価の取扱 いの透明性を確保することが望ましいといえるのです。