IT法務・AI・暗号資産ブロックチェーンNFT・web3の法律に詳しい弁護士|中野秀俊
グローウィル国際法律事務所
03-6263-0447
10:00~18:00(月~金)

健康食品で「痩せる」表示(写真、体験談)は、法律的にOKなの?

IT企業のための法律

健康食品で痩せる表示はOK?

スマートな体形の人の写真や体験談が多数掲載されている健康食品の広告…これだけで痩せる効果があると思って購入したが、後でよく見るとチラシには「これだけで痩せる」とは書かれていなかった。このような広告はOKなのでしょうか。

健康食品ガイドライン

健康食品の表示で、法律的にOKかNGかを示すものとして、平成28年6月30日に公表された「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項」(健康食品ガイドライン)があります。

この中で、表示の内容がOKかを判断する上で、表示物上の文言にこだわらずに、「一般消費者が表示から受ける認識、印象、期待は、表示された一部の用語や文言のみで判断されるものではなく、当該用語等のほか周辺に記載されているその他の表現、掲載された写真、イラストのみならず、時にはコントラストも含め、表示全体で判断することとなる。」と述べています。

例えば、「これだけで痩せる」という文言がなくとも、「これだけで痩せる」効果を示している写真などから見て、消費者が受け取る表示は「これだけで痩せる」効果を示す表示であると認定されます。

表示全体から表示の内容が認定された例

例えば、㈱えがおに対する件(平28.3・30消費者庁措置命令)では、黒酢を使用した健康食品について、事業者が広告で用いていた文言は、以下のようなものであり、「摂取すれば痩せる」といった直接的な表現は用いられていませんでした。

  • アミノ酸一般食酢の120倍のえがおの黒酢でダイエットサポート!
  • タンスの奥のジーンズが出せた!
  • 運動量は変わらないのに遂に出産前のスタイルに!
  • たとえば、脂肪1kg(約7、000kcal)を燃やすにはこんな運動&食事制限が必要なんです。
  • ウォーキング約63時間!、水泳約13時間!、絶食約7日!、こんなに?できない!
  • いつもの軽い運動と一緒に飲み始めて30日
  • えがおの黒酢であっという間の目標達成!その仕組みとは?

しかし、消費者庁は、本件表示全体から、「本件商品を摂取するだけで、特段の運動や食事制限をすることなく、容易に著しい痩身効果が得られるかのように示す表示」をしていたものと判断したとされる(担当官解説(公取792号76頁))。

健康食品の裁判例も

㈱村田園に対する措置命令の取消訴訟でも、健康食品の表示内容について問題とされました。

この事件では、消費者庁は、例えば「村田園万能茶(選)」という商品の容器包装に、「阿蘇の大地の恵み」・「どくだみ・柿の葉・とうきび・はと麦・甜茶・くま笹・あまちゃづる・はぶ茶甘草・大豆・田舎麦・桑の葉・枸杞・ウーロン茎・びわの葉・浜茶」との文字とともに、日本の山里を思わせる風景のイラストが記載されていたことをとらえて、「あたかも、対象商品の原材料が日本産であるかのように示す表示をしていた」と認定している(平28・3・10消費者庁措置命令)。

この措置命令について取消訴訟が提起され、この容器包装上の表示内容は何であったのかが一つの争点となった。結論としては、東京地裁は、以下のとおり、消費者庁の認定を是認している。

「広大な草地等の自然に恵まれた熊本県の阿蘇地方の土地の恩恵を意味する『阿蘇の大地の恵み』との記載が、阿蘇山及びその麓の草地や山里を想起させる風景のイラストと相まって、熊本県の阿蘇地方の広大な農地等の自然の恩恵が本件商品の内容物である茶葉に寄与していることを想起させ、さらに、土壌に植生する植物から採取ないし収穫される茶葉や穀物等の原材料名の記載と並んで表示されることによって、通常の知識や情報を有する一般消費者において、これらの原材料の全部又は大部分が阿蘇地方(国内)の土地において採取ないし収穫されるもの(日本産)であるとの印象を抱くのが通常の受け止め方であると認めるのが相当である。」とし、消費者庁が実施した消費者へのアンケート調査結果を参照しつつ、「本件各表示は、本件各商品の包装の商品名及びこれらの表示の内容全体から、通常の知識や情報を有する一般消費者において、本件各商品の原材料の全部又は大部分が国内で採取ないし収穫された日本産のものであるとの印象をもたらすものとして、一般消費者に対して示されたものと認めるのが相当である。」と結論付けている。

健康食品の広告については、全体的な表示が問題になる

この判決からも明らかなとおり、景品表示法に違反するかどうかの判断に当たっては、まず、事業者が行った表示について、その全体から消費者が表示から受ける印象・認識を基準としてその内容が確定されます。表示の内容が確定した後で、それが実際のものよりも著しく優良であると示すものとして、景品表示法違反などになるのです。