IT法務・AI・暗号資産ブロックチェーンNFT・web3の法律に詳しい弁護士|中野秀俊
グローウィル国際法律事務所
03-6263-0447
10:00~18:00(月~金)

【アプリと法律】契約締結前に開発作業を進めていたのに契約が締結されなかった時の対処法。

契約を締結してくれるから、開発作業をしたのに…

よくある相談として
「アプリ開発の案件で取引先(ユーザー側)から、「契約を締結する」と言われたものの、納期の関係から、ユーザー側の要望に沿って、契約締結前に開発作業を開始することになった。しかし開発作業を進めていたところユーザー側から、社内決裁が下りなかったとして、契約の話はなかったことにしてほしいと言われた。」

このような場合にベンダ側としては、損害賠償を請求したいのだが、契約を締結する前なので、法的措置は取れないのか?といったものがあります。

ベンダ側としては、なにも請求できないのでしょうか?

アプリ開発のベンダ側も、「契約締結上の過失」の理論で、損害賠償請求ができる

上記のような例では、まだ契約は締結されていなかったので、契約に基づく法的請求はできません。

もっとも、契約が成立していなかったとしても、「契約締結上の過失」という理論によって、ベンダ側が救済される可能性があります。

契約締結上の過失の理論とは、「契約の準備段階に入った当事者は、相手方当事者の財産等を害しない信義則上の義務を負い、この義務に違反して相手方に損害を発生させた場合には、これを賠償しなければならない」
というもので、判例によって認められています。

契約締結上の過失の理論が、適用されるかどうかは、

  • 契約書を交わす日程が決まっていたなど、契約の交渉の進行具合
  • ユーザー側が、ベンダ側の開発状況を認識していたか

など、ベンダ側とユーザー側で、どういうやり取りがあったのかを個別具体的に見ていく必要があります。

このように、アプリ開発のベンダ側として、契約が締結されていないからといって、諦めることなく、この契約締結上の過失の理論が使えるか、検討する必要があるのです。