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ジョイントベンチャー(JV)の「データの取り扱い」はどうすべきか

IT企業のための法律

ジョイントベンチャーにおけるデータに取り扱い

ジョイントベンチャー(JV)においては、当事者の一方がデータ解析技術を提供し、他方の当事者がデータを提供するという形態でのJVが考えられます。

IT・Tech系企業では、データ解析技術をもっているが、特定の分野のビジネスについては経験がなく、そのビジネスのデータを入手することができません。

これに対して、他方の当事者は、顧客基盤を確立しており、あるビジネス分野のデータについて蓄積があり、今後も入手可能であるが、データアナリスト等の人材がいないため、データがあっても解析できずに宝の持ち腐れになっています。

また、Tech系企業としては、JVを設立することにより、他方の当事者の蓄積データを利用したビジネスに排他的または優先的に関わることで、自社のビジネスを拡大できる等の期待をもっています。

そこで、お互いに得意分野を持ち寄って、ジョイントベンチャーを作るというものです。

ジョイントベンチャー企業にする理由

単に協業するだけならば業務提携で足り、わざわざJVを設立する必要はありません。あえて、JVを設立する事情としては、以下が考えられます。

(1)お互いに、データ解析技術とデータという価値あるリソースを投入することになることから、プロジェクトに対してお互いに強いコミットをすることを示すことが求められる場合があります。

単なる業務提携契約であれば、解消は比較的容易ですが、JVであれば、資本関係が あるので関係解消のハードルが上がるので、コミットの度合いが高くなります。

(2)たとえば、データなどの資産を集約するのには、JVという箱が必要な場合があります。

JVがない場合には、収集するデータを出資者に帰属させざるを得ないが、出資者がデータを保有することにビジネス上の不都合や、責任問題などのリスクがあるため、別会社であるJVを作るという発想です。

(3)出資者本体が大会社の場合、本体で新規事業を始めるとしがらみが多かったり、稟議などの手続の負担が大きく、機動的に会社の運営ができない場合もあります。

データ関連ビジネスなどは新しいビジネスであるた め、迅速な意思決定が求められることも多いです。そこで、機動力を確保するため、本体と別にJVを設立することも考えられます。

データに関するJVを設立するに当たって場合には、さまざまな点に注意が必要であり、出資者間の交渉事項となります。

どのようなデータを提供するのか

JV立上げに当たって、どのようなデータをJVに提供するのか(どのデータは提供しないか)を可能な限り明確にしておくことが重要です。

データの収集を誰が行うのか

JV立上げ後、データの収集を誰が行うのかという問題があります。データ提供企業が当事者となるのか、JVが当事者となるのかを決める必要があるのです。

また、データには、収集された生データと、それを解析した結果生じる派生データがあるので、それぞれについて検討する必要です。

派生データの取扱いについては忘れがちなので、気を付ける必要があります。

データの帰属先は誰か

生データや解析データが、どの当事者に帰属するのかということを決める必要があります。

帰属主体としては、X社、Y社、JVが考えられるが、JVを組成する以上、まずは、データの帰属主体はJVとなることが多いと思います。

もっとも、JVに単独に帰属するのか、X社・Y社と共有とするのかという問題があります。

成果物・派生データの権利関係は

生データや解析データなどの成果物を、どのような条件で各当事者に提供するかも問題となります。

データを共有する場合であっても、各当事者の利用条件や知的財産の帰属を定める必要があります。

最終的には、これらの利用条件や知的財産の帰属は、出資者とJV会社との間でデータ提供契約を締結することによって定めることになると思います。

個人情報の取扱いについて

個人情報のデータを扱う場合には、当事者間によるデータのやりとりが、個人情報保護法等を遵守しているかをチェックする必要があります。

競業禁止義務を課すか

出資者に、競業禁止義務を課すべきかということを検討する必要が生じる場合があります。

出資者が、他社と組んで同種の事業を行う場合、秘密保持契約があるとしても、秘密やノウハウが流出してしまうリスクは高まります。

他方で、競業禁止義務は双方的な規定となることが多く、競業禁止規定を設けると自らも競業禁止義務を負うことになってしまうことから慎重な検討が必要です。