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システム運用や保守契約で注意すべき法律を弁護士が解説【2024年8月追記】

システム開発のための法律

システム保守契約の問題点と対策

システム開発が終了し、その次には、システムの運用・保守の段階に入ります。

システムの運用・保守契約を締結する際には、どのような点に注意すべきなのでしょうか。

システム運用・保守契約においてベンダ側が負う責任とは何か

保守業務の範囲を明確に

保守契約を結ぶ際に、よくあるのが、以下の項目のみが規定されている契約書しか交わされていない場合です。

  • ベンダが保守・運用を行う
  • 1カ月あたりの保守費用

ここで、トラブルになるのが、保守業務の範囲がどこまでなのかということです。

ユーザ側としては、トラブルになったときには、ベンダがなんでも保守してくれると思っていたけど、実際は、やってくれずに、トラブルになるというケースが多いです。

ベンダ側としても、「この料金で、そこまでの保守はできない」という本音もあるでしょう。

こうしたシステムの保守業務でトラブルを防ぐためには、以下の項目をしっかり規定するようにしましょう。

  1. システムの保守業務の対象
  2. システムの保守業務の範囲は、どこまでか
  3. 対応可能時間

それぞれの項目について注意点があります。

システムの保守業務の対象

以下の項目など、システムの保守業務の対象を、きちっと整理しておきましょう。

  • ソフトウェアのみorハードウェアも対象
  • 複数のベンダが関与して開発されたシステムについて、他者が開発したシステムについて、保守業務をするのか

システムの保守業務の範囲は、どこまでか

システムの保守業務がどこまでかを明確にするのも非常に重要です。これはベンダ側だけでなく、ユーザ側としても、確認しておく必要があります。

  • 対象システムの稼働状況の監視
  • システムのバックアップ
  • ユーザからの問い合わせ対応
  • トラブル発生時の応急対応
  • ソフトウェアのアップデート版を提供

さらに、システムの機能改善や機能追加も対象となるのか?なども確認しておく必要があります。

契約書のほかに、SLAを作成する場合も

システムの運用・保守業務の条件について,詳細にわたる内容がある場合には,契約書本文のほかに、SLA(Service Level Agreement)を別途作成する場合があります。

その際には、上記のことを詳細に定める必要があります。

システム運用保守のトラブル事例

よく問題になるのは、システム障害が起こった場合です。この場合、システム障害が起こったから、必ず保守業者が責任を負うわけではなく、ちゃんとやることをやっていたのかが問題になります。

裁判例では、システム障害が起こった時に、事業者が責任を負うかは、予見可能性があるかで判断されます。つまり、そのようなシステム障害が起こることを予見できたかどうかです。

裁判例は、10年以上システム障害が起こってなかったこと、偶然の要素が重なりシステム障害が起こったことを理由に事業者には予見可能性がないとして、事業者の損害賠償責任を否定しました(千葉地方裁判所平成21年4月17日判決)。

またシステム障害発生後の対応が適切であったか否かという視点からもチェックされます。システム障害発生後の対応が不適切であることによって、損害賠償責任があるとされる場合もあるので、注意が必要です。

保守契約・保守業務でトラブルになった際の対処法

システムの保守業務でトラブルになった場合には、まず、保守業務について、規定された資料がないかを確認しましょう。

契約書やSLAがない場合でも、議事録やメールなどで、保守業務について、やり取りしているものがあれば、そちらも証拠になります。

また「ベンダ側が保守業務を怠ったために損害を被った」と損害賠償を請求するには、どのような損害が生じたのかを、立証できるかが問題になります。

  1. ベンダに支払った保守費用
  2. 人件費
  3. 外注費
  4. 回線費用
  5. 出張旅費
  6. 社員研修費用

などが、損害項目として考えられます。

システム開発・アプリ開発トラブルでの損害賠償はどの範囲までできる?

保守契約は、トラブルの宝庫、だから対策が必要

運用・保守契約は,開発業務の終わりの多忙な時期に締結されることが多く,慎重な検討がなされないまま締結されることも多いです。

しかし,運用・保守契約は5年、10年以上続く長期継続的契約となることも多く,支払総額も膨大になることが多いです。運用・保守契約はシステムの稼働中の対応に関するもので、トラブルになると、業務に及ぼす影響が大きくなります。

トラブルになる事前または事後の対策をしっかりとっておきましょう。