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スタートアップ・ベンチャー企業の業務提携・資本提携の方法と注意点【2022年9月加筆】

IT企業のための法律

アライアンスの方法は、色々ある

ベンチャー・スタートアップ企業は資源が限られています。そこで様々な企業や個人と提携(アライアンス)が必要となる理由になります。このアライアンスの方法(提携方法)には、様々なものがあります。

以下では、活用場面の多い業務提携及び資本提携について解説しています。

業務提携のメリットと注意点

業務提携とは、他社の技術やノウハウを導入しながら、他社と共同して業務を行うことによって、互いの業務の効率化を図ったり、付加価値を高めたりするものです。

業務提携の中には、販売提携、生産提携、技術提供、共同購入などがあります。

販売提携は、互いの販売経路を活用することや(販売店・代理店契約、フランチャイズ契約など)、商品を提供し合うことですが、ベンチャー企業が新商品を開発した際に、他社の販売力を活用することで、一から販路を開拓する時間と費用を節約し、迅速に収益を確保できるメリットがあります。

生産提携は、生産過程や製造過程の一部を委託するものですが、ベンチャー企業にとっては、生産のための設備投資や人員確保を最小限に抑えて生産を行い、また、生産量を増やすことができるメリットがあります。なお、相手方企業としても、製造工場の稼働率を引き上げることができるメリットもあります。

技術提供には、双方が持っている技術を提供する方法(特許やノウハウのライセンス契約など)と、共同開発を行う方法(新技術や新商品の開発を共同で行う契約など)がありますが、ベンチャー企業にとっては、商品の開発費用を削減し、リスクを分散したり、新たな技術の開発や複合化を行えたりするメリットがあります。

いずれの方法によるとしても、当事者間の実際のビジネスの内容、状況、特殊性を十分に反映しながら、どのような方法・内容にすれば双方がメリッ トを享受でき、ベンチャー企業にとって利益となるか(自己の短所を補完し、 技術面、生産面、販売面でより効率化し、飛躍できるか)を考えて提携の検討をできるかが成功の秘訣となります。

他方、紛争予防の観点から、万が一の場合の責任の所在や負担割合についても事前に定めておくべきでしょう。

例えば、生産提携においては、日ごろの品質の管理の責任をどのように分担し、監督をどのように行うのかについて定めておく必要がありますし、万 が一製品に欠陥が生じたときの責任とどのように分担するのかを定めておくことが重要となります。

資本提携のメリットと注意点

資本提携とは、当事者となる企業の一方が、他方の企業の株式を取得することをいいます。また、互いの企業の株式を相互に取得して持ち合う場合もあります。

資本提携は、前述の業務提携とともに行われることがよくありますが、業務提携のみを行う場合よりも、強力な提携関係を築ける場合が多いです。

ベンチャー企業にとっては、より強固な関係を築くことが出来るため、財務や経営レベルで企業同士のシナジー効果を得やすい点がメリットとなります。

また資本としての資金を得ることができますので、その分開発資金や運営資金として活用することも可能となりますし、提携先の新たな経営資源を獲得できるという点においては、更なる発展のための足掛かりとなることも期待できます。

さらに、相手方の企業が大企業や有名企業であれば、ベンチャー企業のブランドや信頼の向上にもつながり、商品の販売力の更なる向上や金融機関、 ベンチャーキャピタルからの資金の獲得にもつながりやすくなります。

他方、資本提携は相手方企業に株式を取得してもらった上で増資を実現する方法ですが、裏を返せば他社を経営に介入させることでもあります。

また、会社内の機密情報に他社が触れる立場になってしまう恐れもあります。

そのため、実際に資本提携を行う際には、機密情報に関する事項については厳密に定める必要がありますし、出資比率をどの程度にするのか(会社法 上、各種決議や株主権行使に必要な議決権の比率が定められておりますので、 どの範囲の権限・権利を認めてよいかという視点で検討するとよいでしょう。)を慎重に検討して交渉を行うべきです。