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システム開発の裁判特有の手続きである「裁判所での技術説明会」及び「実機検証の実施」とは【解説】【2023年4月加筆】

システム開発のための法律

システム開発紛争の裁判における特殊性

システム開発紛争の裁判に関しては、通常の裁判と異なることが多々あります。

手続きに関して、通常の裁判では行われない2つの手続きをご紹介します。

裁判所での技術説明会

一つ目は、裁判所での技術説明です。

通常の民事訴訟では、事前に書面を提出し、それに基づき進行していくので、裁判所において、詳細な説明をすることはありません。

しかし、システム開発の場合には、開発対象が書面だと表しずらいことがあるため、裁判所での技術説明会が開催されることがあります。

技術説明会自体は、民事訴訟法等の法律上定められた制度ではなく、裁判所が必要だと判断した場合に行われる手続きです。

例えば、裁判所に、パソコンなどの実機を持込み、「瑕疵」であるか否かを判断するにあたり、ユーザが、障害・不具合が「瑕疵」であることを明らかにするため、設計書と実装されたシステムの動作が一致しないことを説明した上、ユーザの業務にどのような支障をきたすのかを説明します。

これに対し、ベンダの開発環境では、設計書の内容と実装されたシステムの動作は一致していること、仮に、設計書の内容と実装されたシステムの動作が一致しないと評価される場合であっても、ユーザの指摘とおりに修補するために必要となるプログラム上の修補箇所はごくわずかであり、修補が容易であることや、代替手段が存在することを説明する場合があります。

技術説明では、ベンダとユーザの両当事者に、あらかじめ定められた時間(30分から60分程度)が与えられ、裁判官に対し、この時間内で説明をすることになります。

実際に説明を担当するのは、代理人の場合もベンダ・ユーザの担当者の場合もあります。代理人が概要について説明し、技術的な細かいことについては、担当者という場合も多いです。

なお、技術説明会に臨むに当たっては、限られた時間で、裁判官に納得してもらう必要があるため、パワーポイントなどで、資料を作成しておく必要があります。

実機検証

例えば、ベンダが、納期までに当初の合意通りのシステムを構築できなかったと主張する場合、障害・不具合の発生の有無や、ユーザが障害・不具合と主張する事象の再現状況を確認し、障害・不具合の修補が容易であると主張するベンダに実際に修補を依頼し、修補できるか否かを確認することがあります。

この場合、裁判所からその結果を証拠化するように指示された場合には、当事者は、機検証手順書、実機検証結果報告書等の書面を証拠として提出するとともに、実際に裁判の場で、パソコンを持込み、実演することが行われます。

事前の準備として、ユーザは、訴訟で主張した障害・不具合を、実機検証で確実に再現できるように事前に確認しておく必要があるし、ベンダは、修正したプログラムで設計書の通り、動作することを十分確認しておくべきです。

データの内容等によっては、想定とおりに動作しないことも理論的にはあり得えます。

裁判官は、システムの専門家ではないので、裁判当日に、思い通りに動かないという事態になると、非常に心証が悪くなるので、注意しましょう。

なお、相手方による不正を防止する趣旨で、実機検証における操作手順についても、ベンダ・ユーザ間で事前に合意しておくべきです。