「闇営業」が話題になっている「エンタメ業界」ですが、契約にまつわる状況も非常に特殊です。
吉本興業が、所属タレントと契約書を結んでいないということで、話題になっていましたが、エンタメ業界では、大手の会社でも、契約を結ばないといったことは良くあります。
エンタメ業界は、いわば「ムラ社会」といった要素も強く、昔からの「慣習」によって、ルールを作られています。
そのため「わざわざ契約書を作らなくても…」ということも多いのです。
しかし、このような契約書を作らないことによって、争いになってしまった場合に、どういう結果になるのかを見ていきましょう。
エンタメ業界で多いのが、ライセンス契約です。
エンタメ業界では、このライセンス契約においても、契約書がない、又は非常に簡易な契約書しかないことが多いです。
これは、主に業界内で締結されるという事情と、契約の段階で詳細が決まっておらず、取引の内容がどんどん変化していくということにあります。
このような特性があるからこそ、「最初に決めるのは、難しいよね」ということで、最初は、契約書がない、あっても、非常にざっくりした契約書しかないということが起こるのです。
しかし、このように、契約書がない、契約書があっても、簡易なものしかないとなってしまうと、裁判などの紛争になったときに、「こういう契約があった」ということが難しくなってしまう可能性があります。
つまり、裁判では、こういう合意があったというのは、請求する側が主張立証責任があります。
裁判では、形に残る証拠を重視する傾向にあるので、契約書がない、合意した事項が書かれていないと、その主張が認められないことになります。
「業界の常識」というのは、裁判では通用しないのです。
エンタメ業界については、コンテンツについてのライセンス契約を結ぶ場合があります。
この際、コンテンツについて、権利自体を譲渡するのか、ライセンス(使用許諾)なのかが不明確な場合があります。
例えば、「権利の買取」条項があった場合には、通常は、コンテンツ自体の権利を買い取る、つまり譲渡の意味で解釈されることが通常です。
しかし、例えば、出版業界では、一定の使用料を支払い、その後、引き続き使用することができるとする使用許諾の意味で使われることが多いです。
契約書も、権利を譲渡するのか、ライセンスをするのか、不明確な場合が多々あります。
裁判になると、裁判官は、「業界の常識」は通用せずに、あくまで一般的な法律的解釈をされてしまう可能性があります。
このような用語の意味については、法律上も問題ないのか、注意するようにしましょう。
本来、表明保証条項については、お互いに守ってほしい条項について記載し、これを破った場合には、契約解除・損害賠償などできますという規定になっています。
しかし、エンタメ業界の「表明・保証条項」では、これに反する事由等が生じた場合には、表明・保証を行った当事者が相手方当事者に対し、「誠実に対応する」と規定されることがあります。
このような効果がはっきりしない契約条項では、いざ違反があった場合に、法律的な請求ができない可能性があります。
契約書の「表明・保証条項」について、今一度、確認しましょう。