越境ECとは、売主がECサイトを通じて、日本だけでなく、国境を越えて、商品・サービスを販売することをいいます。
越境ECは、日本でだけでなく、海外に対して、商品・サービスを販売するので、海外に対して認知してもらう必要です。
このような越境ECですが、法律的に注意すべきことは、どこにあるのでしょうか?
越境ECが普及した背景には、決済環境が整ったことが大きいです。決済サービスについては、PaypalやWeChat pay、AliPayなどのサービスが有名です。
しかし、このような決済サービスを提供するためには、日本においては、資金決済法上の「資金移動業」の登録が必要である可能性があります。
どういう行為が「資金移動業」に該当するかというと、「為替取引」を行う場合です。
そして、判例上、為替取引とは「隔地者間で直接現金を輸送せず に資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き 受けること、又はこれを引き受けて遂行すること」とされています。
この典型例が、銀行振込の仕組みです。
この為替取引が、金融機関以外が行うためには、資金決済法の改正により、「資金移動業」として登録を行う必要があります。
もっとも、資金移動業を行う事業者は、内閣総理大臣への登録が必要になるほか、以下のような規制がかかります。
特に、1回当たり、100万円以下しか取引できない、本人確認措置を行わないといけないのは、事業上、高いハードルになります。
そこで、注目されているのが、決済代行(収納代行)サービスです。
決済代行サービスとは、商品やサービスの提供者のために、第三者が、サービスを提供された人から代金を受け取り、それを提供者に渡すという仕組みです
コンビニなどの 公共料金の受取サービスがこれに該当します。
また、クラウドソーシングサービスでも、事業者が買い手(発注者)から代金を預かり、商品の引き渡しや仕事の完成が完了したことを確認した時点で、第三者が売リ手(受託者)にお金を支払うサービスも、出てきています。
この決済代行サービスは、現時点では、資金決済法上の資金移動業などの規制の対象外とされています。
これは、金融庁の金融審第二部会報告書 金融審第二部会WG報告でも述べられています。
この決済代行サービスは、実際上のお金の流れは「為替取引」と一緒に、「資金移動業」の登録が必要となるとも思えます。
しかし、決済代行サービスの場合には、代行業者が、単に代金を預かるだけでなく、支払者が代行業者に代金を支払った時点で、受取者と支払者との間の決済が完了するというのが、ポイントです。
つまり、仮に、代行業者が倒産しても、支払者は、二重に代金を支払う必要はないということなのです。(その代わり、受取者は、損害を被る可能性はあり)
よって、このような決済代行サービスを行いたい場合には、利用規約や契約書に、上記のような仕組みであることを明示し、資金決済法上の資金移動業ではなく、決済代行サービスであることを示す必要があるのです。
例えば、日本法人が、海外に商品・サービスを販売する場合、以下のようなリスクが生じます。
越境ECサイトの利用規約の記載にも、注意が必要です。
日本人を相手にする場合でも、利用規約の記載は重要ですが、海外との取引ともなると、商慣習が違いいます。
ルールとなる利用規約はきちんと定める必要があるのです。
裁判管轄とは、紛争が生じた場合に、どこの裁判所で行うかという問題です。日本法人の場合、日本の裁判所で行うことができれば、ベストです。
日本の民事訴訟法では、消費者契約に関する事業者から消費者に対する訴訟については、消費者の住所が日本国内にある限り、日本の裁判所が管轄権を有するとされています。
越境ECサイトは、多くがBtoC取引なので、それは「消費者契約」に該当します。よって、海外のユーザーとの間では、日本での裁判所ではできないことになります。
では、利用規約に「裁判管轄は日本とする」と定めれば、日本で裁判はできるのでしょうか?
民事訴訟法では、消費者契約に関する裁判については、事前の裁判管轄の合意は原則無効という規定がされてます。
なので、利用規約に裁判管轄を記載しても、無効とされてしまう可能性があります。
ただし「裁判管轄は日本」と記載することで、海外の購入者が訴えることを諦めるという効果はあるかもしれません。
準拠法とは、紛争になったときに、どこの法律が適用されるかという問題です。
これは、契約書や利用規約で記載しておけば、その法律が適用されます。ただし、消費者は、自国の消費者保護法も適用を主張できるとされています。
事業者としては、利用規約などで、準拠法を規定しておくことが必要ですが、いざ紛争となったら、購入者の法律も主張される可能性があります。