現在、多くの仮想通貨交換業者において、仮想通貨の証拠金取引が提供されています。
金融庁の研究会報告書によれば、2017 年度において、仮想通貨デリバティブ取引は、仮想通貨交換業者を通じた国内の仮想通貨取引全体の約8割を占めています。
今回の金融商品取引法の改正で、暗号資産(仮想通貨)デリバティブ取引について、投資家に適正な自己責任を求めつつ、一定の規制を設けたうえで、利用者保護や適正な取引の確保を図るため、規制の対象となりました。
金商法の規制では、「金融商品」又は「金融指標」を対象とするデリバティブ取引は、金商法の業規制(参入規制)及び行為規制の対象となるとされているのですが、今回の法改正では、「金融商品」の定義に「暗号資産」が追加されました。
※2020年5月1日に、暗号資産の関連法が施行されました。
https://it-bengosi.com/2019-crypto-ico/
暗号資産が、金融商品に含まれることとなったので、暗号資産に関する店頭デリバティブ取引又はその媒介、取次ぎを業として行うことは、第一種金融商品取引業に該当します。
これは、従来のFX(外国為替証拠金取引取引)事業者と同じ、金融商品取引業としての登録を受ける必要が生じます。
法律上、第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者になろうとする者は、以下の財産要件を含む登録要件を満たす必要があります。
改正法では、金融商品取引業者が行う暗号資産に関するデリバティブ取引は、法律が規定する行為規制を遵守する必要があります。
具体的には、以下のような規制になります。
さらに、金融商品取引業者が一般投資家(法律上の「特定投資家」に該当しない者)を相手として暗号資産デリバティブ取引を行う場合、以下の書面の交付義務も生じます。
レバレッジ規制とは、一般に、取引額(想定元本)に対する一定割合以上の額の証拠金を顧客に預託させることを業者に対して義務付ける規制(証拠金規制)をいいます。
金融庁の「仮想通貨交換業等に関する研究会報告書」によれば、仮想通貨の証拠金取引における証拠金倍率については、現状、最大で25倍を採用している業者も存在していることを指摘し、仮想通貨の価格変動は法定通貨よりも大きいことを踏まえ、実態を踏まえた適切な上限を設定することが適当という指摘がされています。
現状の金商法では、レバレッジの倍率が25倍以下になるように規制がされています。
金商法改正法案における改正項目ではないものの、今後の政府令の改正により、暗号資産デリバティブ取引についても、同様の規制の適用対象となることが想定されます。
なお、仮想通貨交換業にかかる認定協会である一般社団法人日本仮想通貨交換業協会の証拠金取引に関する規則及び同ガイドラインでは、証拠金倍率は原則として4倍以下とされています。
ロスカットとは、損失が一定のレベルに達した場合に、更なる損失の拡大を防ぐため、強制的に取引を決済する仕組みをいいます。投資家が、莫大な損失を被ることを防止するための規定です。
金商法上、金融商品取引業者に対し、個人顧客を相手方とする通貨関連デリバティブ取引について、ロスカットの整備・遵守が義務付けられています。
ここに、暗号資産(仮想通貨)の規定が追加されるかは、今のところ分かりませんが、今後の政府令の改正により、暗号資産デリバティブ取引についても、同様の規制が規定される可能性があります。