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仮想通貨のマイニングビジネスに関する法律の現状とは【2023年3月加筆】

仮想通貨・デジタル通貨に関する法律

仮想通貨のマイニングビジネスと法律

仮想通貨のマイニングビジネスについては、様々な事業者が行っています。

現状、仮想通貨のマイニングビジネスについては、どのような法律になっているのでしょうか。
2019年の仮想通貨(暗号資産)の法律は、こちら

徹底解説!2019年の仮想通貨(暗号資産)とICOの法律改正の4つのポイント

自ら、マイニングビジネスを行う場合

典型的なマイニング事業のビジネスモデルとして、自らマイニング事業を行う場合があります。

この場合、マイニング報酬や取引手数料を得るために、自らマイニング作業に必要なコンピューター、電気代、運営施設などの設備投資をして利益を出すビジネスモデルです。

このようにマイナーが、単独で行うマイニングはソロマイニングと呼ばれ、マイニングに成功した場合のマイニング報酬や取引手数料を独占できるメリットがあります。

しかし、その一方、単位時間当たりの利回りが低いというデメリットもあります。

マイニング機器やソフトウェアを揃えれば個人でもマイニングを行うことは可能であるが、競争が過熱し、難易度が高まったビットコイン等のマイニングにおいては一般に、個人が用意できるマイニング機器のスペック、数量に限界があり、また、高額な電気代を要することから、一般的な個人によるマイニングによって利益を得ることは困難です。

現状、日本において、マイニングそのものは禁止その他の規制の対象とされていません。

仮想通貨ファンドやマイニングなどの仮想通貨関連ビジネスの法律上の規制とは

また、マイナーがマイニングによって得た仮想通貨を決済に使用することや仮想通貨交換所等で法定通貨または他の仮想通貨と交換することも規制の対象とはされていません。

もっとも、マイナーがマイニングによって得た仮想通貨の売買や当該仮想通貨と他の仮想通貨との交換を、「業として行う」場合には、仮想通貨交換業に該当しますので、注意しましょう。

マイニングプールの組成する場合

マイニングプールとは、複数のマイナーが協力してマイニングを行うコミュニティのことをいいます。

要するに、マイニングプールとは、個としてマイニングを行うソロマイニングではなく、複数で協力してマイニングを行う集団のことです。

マイニングプールの仕組みは、プール管理者を報酬の受取人とし、プールに参加するマイナーが同じブロックをマイニングし、そして、マイニングに成功した際、プール管理者に支払われた報酬を各マイナーのマイニングの仕事量に応じて、マイナーで分配する仕組みです。

ソロマイニングに比して、大規模な設備投資によるハイスペックかつ多数のマイニング機器を投入できるため、マイニングに成功する確率はソロマイニングの場合よりも飛躍的に高く、利益を得られる可能性が高いです。

一方で、マイニングに成功した場合のマイニング報酬や取引手数料はプールに参加するマイナーに分配するため、貢献度によってはさほど利益を得られない可能性もあります。

現状、日本において、マイニングプールの組成そのものを禁止した法律はありません。

しかし、マイニングプールは、出資者から出資を募り、その投資によって得られた収益を出資者に分配するという仕組みです。

すなわち、マイニングプールに参加、設備投資をするマイナーを募り、得られたマイニング報酬等をマイナーに分配するというものなので、金融商品取引法上のいわゆる集団投資スキーム(ファンド規制)に該当する場合があります。

集団投資スキームに当たる場合とは、以下の場合です。この集団的投資スキームに当たると、第二種金融商品取引業の登録を受ける必要があります。

  1. 出資者が金銭(または金銭に類似するものとして政令で定めるもの)を出資すること
  2. 出資または拠出された金銭等を充てて事業が行われること
  3. 出資者が事業から生ずる収益の配当を受けること

よって、マイニングプールの組成に当たって、参加するマイナーから金銭等の出資等を募り、当該出資等された金銭等を充ててマイニングプールを組成し、マイニング事業から得られた収益等の分配を行う場合には、集団投資スキームに該当します

この場合、①出資者が金銭という部分を仮想通貨で出資してもらう分には、①を要件を満たさず、集団的投資スキームには該当しないことになります。

また、マイニングプールの参加者が、事業者ではなく、一般消費者等を対象とする場合には、消費者契約法、特定商取引法、個人情報保護法なども適用されますので、注意が必要です。

マイニングを業務委託する場合

前述の通り、プールマイニングを行うに当たっては、第二種金融商品取引業の登録を受ける必要があります。

集団投資スキームに該当しないように、一般的に、マイニングの業務委託という手法が採られることが多いです。

具体的には、いかのようなものです。

  1. プール管理者が、マイナーにマイニング機器を販売(売買契約
  2. マイニングプールに参加するマイナーは、自らマイニング機器を所有し、プール管理者に対して、マイニングの業務委託契約を締結
  3. プール管理者は、マイニング施設においてマイニング機器を稼働させてマイニングを行う

プール管理者は、マイニングによって得られたマイニング報酬等からマイニング施設に係る費用(施設の賃料、共益費、電気料金等)を控除して、残る利益を各マイニング機器の仕事量に応じて業務委託を行ったマイナーに分配するというものです。

この点については、契約としては、①マイニング機器の売買契約、②マイニングの業務委託契約なので、仮想通貨法には、直ちに抵触するわけではありません。

また日本法において、このようなマイニングの業務委託等を禁止した法律はありません

しかし、この場合でも、実態として、集団的投資スキームであるとみられてしまうと、金融商品取引法が適用されてしまう可能性があります。

特に、金融規制は、形式を整えておけばいいわけではなく、実態を見られます。契約書の記載や契約形態などをきちんと整備しておく必要があります。

また、マイニングの業務委託等についても、消費者契約法、特定商取引法、個人情報保護法などが適用されるため、留意が必要です。