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クラウドサービスにおいて、そこにアップロードされているコンテンツが、第三者の著作権を侵害している場合、誰が責任を負うのでしょうか。
クラウドサービスの場合、事業者は、データを収納する場を提供しているだけですが、この場合も、クラウドサービス事業者は、責任を負うのでしょうか?
この場合、著作権を侵害しているコンテンツをアップロードしているのはあくまでユーザです。よって、クラウド事業者は、第三者の著作権を直接的に侵害してるわけではありません。
しかし、ユーザに対して、著作権侵害行為をすることができる場を提供することによって、ユーザによると著作権侵害行為を補助してるとして、クラウド事業者の損害賠償責任を負うことがあります。
また、クラウド事業者に対して、ユーザから投稿された違法コンテンツを削除する責任があるのかどうかということも議論されています。
これについては、従前から著作権の間接侵害の問題として議論されていて、ユーザが、違法コンテンツを上げた場合に、その運営する事業者も著作権侵害していることになるのか(著作権侵害主体になるのか)どうかという問題です。
この間接侵害については、最高裁判例なども出ています(クラブキャッツアイ事件・まねきTV事件・ ロクラクII事件)。もっとも、これらの最高裁判例は、クラウドサービスに関する事件ではありません。
上記、間接侵害の判例が、クラウドサービスに及ぼす影響について、文化庁の出しているクラウドコンピューティングと著作権に関する調査研究報告書においても、上記間接侵害の判例から、直ちに、クラウドサービス事業者が、ユーザから投稿された違法コンテンツを削除する責任があるとはいえないとしています。
クラウドサービス事業者が著作権侵害主体あると判断されるかは、当該クラウドサービスの内容次第です。
利用者のデータをサーバー上に預かるサービスであれば、そのデータが、第三者の著作権を侵害していたとしても、クラウド事業者が著作権侵害したりあると判断される恐れは、小さいといえます。
一方、サービス自体が、第三者が著作権を有するコンテンツをアップロードすることを念頭に置いており、かつ利用者単独では実施できないようなサービス(専用データ形式の変換をするなど)を行っているなど、クラウドサービスの一環として行っているような場合には、クラウド事業者が著作権侵害主体であると判断される恐れが大きくなるといます。
判例でも、ユーザの投稿する動画による著作権侵害が問題となった事件において、
このサービスが本来的に著作権を侵害する可能性が極めて高いサービスであり、サービス提供者が、このようなサービスを管理支配していて、サービス提供者が著作権を侵害していることが予想することができ、現実に認識している場合には、サービス提供側で著作権を侵害する動画ファイルの削除措置について何ら有効な手段を取らなかったといえ、サービス提供者が著作権侵害の主体であると認定しました。
クラウド事業者としては、ユーザがアップロードするコンテンツについて、著作権に違反するようなコンテンツであるということがわかった場合には、削除措置を取る必要があります。
著作権侵害コンテンツなどの違法コンテンツを発見できるように、著作権違反通告フォームなどの措置を取っておく必要があります。