今や資金調達の手段として、市民権を得たと言っても良いクラウドファンディングですが、出資法の適用を受けるのでしょうか?
出資法の条文とともに、見ていきましょう!
出資法は1条において、「何人も、不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない。」と定めています。
購入型クラウドファンディングや寄附型クラウドファンディングは、金銭によるリターンを受領することが想定されておらず、資金提供者が出資を行うわけではありません。
これに対し、投資型クラウドファンディングや貸付型クラウドファンディングなどの金銭によるリターンを受領することが想定されているクラウドファンディングは、いずれも資金提供者が出資を行うこととなります。
出資金は、本来、元本の払戻しが保障されないことを本質としており、それにもかかわらず、あたかも出資金が常に返ってくるかのような誤解を招く方法で出資を募ることがあれば、出資法1条に違反し、刑罰の対象となります。
出資法2条1項は、「業として預り金をするにつき他の法律に特別の規定のある者を除く外、何人も業として預り金をしてはならない。」と定めており、同条2項は、預り金の定義につき、「不特定かつ多数の者からの金銭の受入れ」であって、「預金、貯金又は定期積金の受入れ」又は「社債、借入金その他いかなる名義をもつてするかを問わず、預金、貯金又は定期積金の受入れに掲げるものと同様の経済的性質を有するもの」をいうと定めています。
金融庁は、事務ガイドライン第三分冊(金融会社関係)2-1-1(2)において、「預り金」の要件として、以下の点を挙げており、個別事例ごとに実態に即して実質的に判断されることになっています。
購入型クラウドファンディングや寄附型クラウドファンディングは、金銭によるリターンを受領することが想定されておらず、資金提供者から預り金の受入れを行うわけではありません。
これに対し、投資型クラウドファンディングや貸付型クラウドファンディングなどの金銭によるリターンを受領することが想定されているクラウドファンディングは、資金提供者が匿名組合契約などを介して出資を行うため、③元本の返還が約されていないことが通常であり、また、④主として預け主の便宜のために金銭の価額を保管することを目的とするものではないため、預り金に該当するものではないと考えられます。
出資法5条2項は、「金銭の貸付けを行う者が業として金銭の貸付けを行う場合において、年20パーセントを超える割合による利息の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
その貸付けに関し、当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。」と定めています。
利息制限法及び貸金業法が定める上限金利(貸付金額に応じて15%から20%)の定めは、これに違反する金利の定めを私法上無効とするとともに、行政処分の対象としていますが、出資法5条2項が定める上限金利(20%)は、これに違反する金利の定め等を刑事罰の対象としています。
購入型クラウドファンディングや寄附型クラウドファンディングは、金銭によるリターンを受領することが想定されておらず、金利規制の対象にはなりません。
また、投資型クラウドファンディングや貸付型クラウドファンディングなどの金銭によるリターンを受領することが想定されているクラウドファンディングにおいても、通常は、資金提供者が出資を行うこととなるため、金利規制の対象にはならないと考えられます。
もっとも、貸付型クラウドファンディングにおいて、貸付人(貸金業者)が金利規制の対象になることはもちろん、資金提供者が資金需要者(借入人)に対して貸付けを行ったと評価される場合には資金提供者に対して金利規制が適用されるおそれがあることに注意が必要です。