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コンテンツの著作権について、法律的に問題にならない使用方法とは【解説】【2023年3月加筆】

著作権に関する法律

コンテンツを利用したい

自分のコンテンツを作成するために、他人のコンテンツを利用したい。その場合に問題になるのは、著作権です。

具体的にどのようなコンテンツを、どのように使えばよいのでしょうか?以下、解説していきます!

統計グラフ

統計グラフが、著作権で保護されるためには、そもそも著作物である必要があります。

著作物であるためには、「思想又は感情を創作的に表現したもの」などのオリジナリティが必要です。

そもそも、実験結果やアンケート調査結果などのデータ自体は、「思想又は感情」に該当しません。

また、これらのデータについて一般的に使用されているありふれた棒グラフ、円グラフ、折れ線グラフなどを使って作成された統計グラフであれば、創作的に表現したものとはいえず、著作物には該当しないと判断される場合が多いものと考えられます。

ただし、統計グラフであっても、見る人にとってグラフの内容が理解しやすいように独自の表現上の工夫が施されて作成されたものである場合には、創作的に表現したものとして著作物に該当する場合もあります。

引用への該当性

著作物に該当する統計グラフを著作者に無断でそのまま転載する場合であっても、引用に該当するのであれば、法律上OKです。

引用について規定した著作権法32条1項は、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」と規定しています。

裁判例では、次の要件を満たす必要があると言われてます。

  • 明瞭区分性
  • 主従関係

明瞭区分性

他人の著作物と自己のオリジナルコンテンツを、きちんと分けるということが必要になります。

分け方としては、引用する他人の著作物をカッコで括る、他人の著作物の出典を明示するなどの対応が必要なのです。

主従関係

他人の著作物を引用するときには、質的にも、量的にも、自分のオリジナルがメイン「主」であり、引用する他人の著作物は、「従」という関係でなくてはなりません。

例えば、他人の著作物を全文表示して、最後に「感想はいかがでしたか」という文章を載せる場合には、これは、主従関係がなく、「引用」とはいえないことになります。

利用目的などの要件

また、上記に加えて、近年の裁判例で、引用に当たる場合の考慮要素として、上記①②に加えて、(a)利用の目的(b)方法(c)態様(d)利用される著作物の種類や性質(e)利用される著作物の著作権者におよぼす影響の有無・程度などが総合考慮されなければならないと判示しました(知財高裁平成22年10月13日判決)。

したがって、著作物に該当する統計グラフがどのように利用されているのか、上記のような様々な事情を総合的に判断されることになると考えられます。

①明瞭区分性と②主従関係についていえば、①一緒に掲載する自身の文章と明確に区別して統計グラフを転載していれば明瞭区分性は認められるものと考えられます。

②統計グラフを引用する目的に照らし、自身が掲載する文章と引用する統計グラフの性質・内容・分量や統計グラフを引用する態様等を踏まえて、自身が掲載する文章が主、引用する統計グラフが従という関係にあると評価できるものであれば、主従関係も認められるものと考えられます。

他人のウェブサイト上にあった写真をそのまま(又はトリミングして)掲載

写真の著作物性

写真が著作権法上保護される写真の著作物に該当するには、写真が思想又は感情を創作的に表現したものでなければなりません。

写真といっても多様であり、芸術性の高い真には著作物性が認められる一方、固定式監視カメラで撮影した写真、自動証明写真、絵画を忠実に撮影した写真などについては著作物性が認められないといわれています。

ただし、具体的な撮影方法によっては、正面から撮影された商品の紹介用写真についても、著作物性が認められることが多いと考えられています。

引用への該当性

著作物に該当する写真を著作者に無断でそのまま掲載する場合であっても、引用に該当するのであればOKです。

トリミングによる同一性保持権の侵害

写真をトリミングする行為は、当該写真の著作者の同一性保持権を侵害することになります。

キャラクターが写っているテーマパークでの撮影

キャラクターの著作物性

テーマパークにおいて、そのモチーフや宣伝広告塔となっているキャラクターが存在する場合、そのキャラクターの絵が当該テーマパーク内の建造物や看板等に描かれていたり、そのキャラクターの着ぐるみがテーマパーク内でイベントを行ったり、お客さんと写真を撮影したりしていることがあります。

このようなキャラクターの絵や着ぐるみについては原則として著作物性が認められます。

写り込み

このようなテーマパークにおいて記念写真を撮影する場合には、当該キャラクターの絵や着ぐるみがその写真の背景に写り込んでしまうことがあります。

キャラクターが写り込んだ写真を無断でウェブサイトやブログSNS等に掲載する場合、当該キャラクターに関する著作物を複製し公衆送信することになりますので、形式的には当該キャラクターの著作権を侵害する行為に該当します。

しかし、テーマパークにおいて一緒に遊びに来た友人らと共に記念写真を撮影する際にその背景に小さくキャラクターが写り込んでいるような場合、著作権者の利益を不当に害するともいえないと思われます。

写り込みに関する権利制限規定である著作権法30条の2が適用される結果、当該写真の撮影行為と当該写真をウェブサイトやブログSNS等に掲載する行為は、適法と判断される可能性が高いものと考えられます。