顧客から様々なデータを預かるクラウドサービス。事業者としては、当然顧客のデータをきちっと管理する必要があります。
クラウドサービス事業者は、顧客から預かったデータについて、消失防止義務を負います。
クラウドサービスを提供する事業者が、契約上のデータの消失防止義務に違反してデータ を消失させた場合には、顧客に対して、損害賠償責任を負うのです。
もっとも、顧客の側でも複製して同一 内容のファイルを保持することは可能です。また、クラウドサービスといっても、様々な種類のものがあります。
例えば、レンタルサーバサービスなどは、単に顧客が作成したウェブサイトやコンテンツをインターネットで公開することを目的としたもので、顧客が全く同一のバックア ップのデータを保持することが簡単にできます。
このような場合には、データの消失防止義務も限定的なものとなると考えられます。
クラウドサービス事業者の責任は、契約書や利用規約に定める契約条件と、当該クラウドサービス に要求される信頼性の水準などの考慮する必要があるのです。
では、クラウド事業者が責任を負う場合には、いくらくらいの責任が生じるのでしょうか
顧客がデータ消失により生じる損害としては、
が考えられます。
また、顧客が個人の場合の思い出の家族写真などの場合には、慰謝料の対象となる可能性があります。
では、仕事上の大事なデータが消失してしまった場合に、「② データ消失によって生じる顧客の事業の支障による損害」とは、どこまでの責任をいうのでしょうか?
ケースによっては、何億円、何十億円という金額になる可能性があります。
金額についてはケースバイケースですが、一般的に、あまりにも高額な損害賠償の場合には、クラウド事業者は、予見できない損害について、事業者は損害賠償責任を負いません。
また、データ保有者である顧客にデータのバックアップ作成の義務がある場合には、顧客 がバックアップを怠っていたことに対して、過失相殺が認められます。
クラウド事業者は、事前に利用規約などで、利用者にはバックアップ義務があることを明記しておいた方がよいでしょう。
クラウド事業者としては、顧客のデータの消失により生じる損害は、事業者にとって予測が困難であり且つその金額 が非常に大きくなる懸念がある恐れがあるので、クラウドサービスの利用規約では、データ消失による損害につき責任制限が定められておく必要があります。
もっとも、顧客が消費者(個人)の場合には消費者契約法第8条第1項第1号及び第2号により、以下の点は無効とされるとしています。
一方で、事業者との契約については、消費者契約法の適用がありません。そこで、利用規約などで責任制限の規定は、原則としては有効になります。