キャッチフレーズや商品のコピー文について、無断使用された場合には、企業としてどのような手段を取れるのでしょうか?
ここで問題となるのは、不正競争防止法です。
この中で、多くの人が認識している商品名やキャッチフレーズなどを使って、その商品を販売している会社の商品なのではないかと混同させて行為を「不正競争」としています。
したがって、消費者の間で広く認識されているようなキャッチフレーズを第三者が無断で使用し、元々の商品の販売元の商品なのではないかと誤解させるようなキャッチフレーズの使用は不正競争防止法違反になります。
他人のキャッチフレーズを無断で用いている第三者に対しては、当該キャッチフレーズの使用により営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある場合には、そ当該キャッチフレーズの使用の差止めを請求することができます。。
なお、この差止請求権が認められるためには、下記の損害賠償請求の場合と異なり、侵害者の故意または過失は必要ありません。
不正競争防止法では、「故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる」としており、当該規定により、故意または過失によって無断で他人のキャッチフレーズを使用した者に対して損害賠償請求することが可能です。
また、不正競争防止法5条には損害額の推定規定が置かれています。キャッチフレーズを使ったことにより、相手方が儲けた金額を請求できます。
著作権法によって保護される著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したもの」であることが必要です。
そして、この「創作的に表現したもの」といえるためには「当該作品が、厳密な意味で、独創性の発揮されたものであることまでは求められないが、作成者の何らかの個性が表現されたものであることが必要」であるとされており「文章表現による作品において、ごく短く、又は表現に制約があって、他の表現がおよそ想定できない場合には、創作的に表現したものということはできない」とされています。
裁判例では、「ボク安心 ママの膝より チャイルドシート」という標語について、著作物性を認めました。
判決では、その理由として
・3句構成からなる5・7・5調リズミカルに表現されていること
・「ボク安心」という語が冒頭に配置され、幼児の視点から見て安心できるとの印象、雰囲気が表現されていること
・「ボク」や「ママ」という語が、対句的に用いられ、家庭的なほのぼのとした車内の情景が効果的かつ的確に描かれているといえること
これから、オリジナリティがあるとされたのです。
一方で、「あるひとつぜん えいごがくちから とびだした」について、このようなキャッチフレーズのような宣伝広告については、創作性が否定されるとして、キャッチフレーズの著作物を否定しました。
これらの判決からすると、キャッチフレーズやスローガンといった短い文章に関しては、原則としては、著作物性が認められず、作成者の個性が表現されているものであれば、例外的に著作権法上の著作物として保護される可能性があるいったイメージです。
著作物に該当するキャッチフレーズを無断で利用(複製等)すれば、著作権侵害となります。かかる著作権侵害行為に対して、著作権法は以下のような救済手段を設けています。
著作権者は、著作権を侵害する者または侵害する おそれがある者に対し、その侵害の停止または予防を請求することができます。
当該キャッチフレーズの削除などです。
この差止請求権が認められるためには、侵害行為を行った者に故意または過失があることは要求されていません。
著作権法違反に基づく損害賠償請求権は、損害額の推定規定が置かれており、相手方が儲けた金額や相場により使用料の請求をすることができます。