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AI(人工知能)の学習用データの著作権についての法律についてAIに詳しい弁護士が解説【2023年3月加筆】

ロボット・AI・ドローンの法律

AI(人工知能)の学習用データの法律的解釈とは

AI(人工知能)の法律については、まだ未整備なところがあり、今後どのような法律ができるかはまだ、不明確なところはあります。

しかし、現在もAI(人工知能)については、開発が進んでおり、そうなると、現在の法律での解釈をする必要があります。

2017年3月には、「知的財産戦略本部 検証・評価・企画委員会新たな情報財検討委員会」が、現在のAIに対する法解釈について、一定の指針示しました。

今回は、AIの学習用データについて、どのような法解釈になるか、見ていきたいと思います。

AIの学習用データ作成と著作権法

AIについての学習用データを作成するためには、元となる大量のコンテンツが必要です。

そうなると、学習用データを作成する行為は、元のコンテンツの著作権違反をするのではないかが問題となります。

しかし、この元のコンテンツをもとに学習用データを作成する行為は、著作権侵害にならない例外とされる「情報解析ための使用」(著作権法第 47条の7)に基づき、適法と考えられます。

もっとも、この規定では、元のコンテンツを、譲渡や公衆送信をすることまでは許されていません

そうなると、AI(人工知能)学習用データの開発を複数人で行う場合には、学習用データを作成する「データ作成者」と、実際にAI学習を行う「AI学習を行う者」が異なる場合があります。

そのとき「データ作成者」から「AI学習を行う者」へ学習用データを譲渡することは許されないのではないかという問題が生じます。

AI(人工知能)の促進と法律的解釈

現在のAIの作成・開発においては、分析等に用いる学習用データを収集するデータ作成者とAIの開発に関する技術を有しているAI学習を行う者などの複数のメンバーで行うことが一般的です。

このような場合、データ作成者からAI学習を行う者に対して学習用データが提供されることは、一般的に行われています。

よって、このような場合に、学習用データをAI学習を行う者へ譲渡する行為が著作権法上違法と解されてしまうと、AIの開発に支障が生じてしまいかねません。

この点、上記報告書でも、この点については問題であるとした上で「AIの作成・開発の促進という観点からは、情報解析という共通の目的を共有する特定当事者間での譲渡であれば、現行の著作権法でも可能と解釈されるべきである」として、適法との見解を示しています。

AI学習用データを特定の者を超えて、提供する場合

AI開発をするにあたり、著作権法第47条の7又は同様の権利制限規定により、作成した学習用データについて、特定の者だけでなく、多数の者が参加するコミュニティにおいて、学習用データ等を共有してAIの研究・開発を実施するということが行われています。

これは、AIの性能は、学習用データの量や内容等に左右されるとの指摘があり、今後、我が国の社会から生成される学習用データが、可能な限り、共同で効率よく収集され、AIの研究・開発のために共有されることが望ましいのは間違いありません。

しかし、一方で、無防備に学習用データを提供可能としてしまうと、「学習用データ」と称して元のコンテンツが元の姿のまま、流通してしまう可能性があります。

この点、文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会において、著作物のコンテンツが表に出ていないような一定の行為については、著作権侵害としないという方向性が示されています。

よって、現行法のもとでも、著作物の表現の知覚を伴わない利用行為については、法律上の問題はない可能性が高いともいえます。

しかし、「著作物の表現の知覚を伴わない利用行為」などは、評価を伴うものですので、利用するときには、専門家などの意見を聴きましょう。

AI(人工知能)の法律は、現在の法律と今後の方向性を熟知しておく必要

AI(人工知能)の法律は、現在の法律のほかに、今後の規制の方向性を押さえておく必要があります。

今後の方向性を押さえておけば、現在の法律に抵触しそうでも、大丈夫という判断がされる可能性が高いからです。

AI(人工知能)の開発は、法規制と十分に留意して行うようにしましょう!